カルチャー
インタビュー【後編】

ゆるキャラビジネスの“光と闇”――「ふるさと納税で6億円稼ぐ」「グレーな仕事で在宅起訴」

2019/08/30 16:00
番田アミ
しんじょう君オフィシャルサイトより

 ゆるく愛らしい見た目とは裏腹に、著作権問題や『ゆるキャラグランプリ』への不正な組織票が取り沙汰されるなど、全然“ゆるくない”ゆるキャラ業界。前編に引き続き、『ゆるキャラ論 ~ゆるくない「ゆるキャラ」の実態~』(ボイジャー)の共著者であり、自身もキャラクター制作に携わるデザイナーの犬山秋彦氏に、業界の裏事情を聞いた。

――前編では、『ゆるキャラグランプリ』に参加する自治体が多額のお金と時間を費やし、1位の座を勝ち取ろうとする泥臭い実情を知ることができました。グランプリを獲得したとして、経済効果はどれほどのものなのでしょうか。

犬山秋彦氏(以下、犬山) 2016年に行われた第7回大会で1位になった、高知県須崎市の「しんじょう君」は、その年のふるさと納税で6億円近くまで集めましたね。

――6億円!? 一体どうやって稼いだんですか?

犬山 しんじょう君そのものをデザインしたグッズだけでなく、しんじょう君がブログで地元の名産品をうまいこと紹介したんです。どんな話題でも、最終的にはふるさと納税に絡めていくという(笑)。これを嫌味なく書いていて、ファンはしんじょう君を応援する意味合いも込めて、ふるさと納税をしているようです。

 あと、須崎市では毎年9月にしんじょう君も出演するイベントが行われていて、市民の数よりも多くのファンがやってくるんです。これにより、観光や宿泊費で市にお金が入るという経済効果もあります。キャラクターの活動が地元の経済波及につながることは、“ご当地キャラ”の存在意義と合致するので、正しいお金の動き方だと思います。

ゆるキャラ運営は「唯一、罵られない部署」

――ゆるキャラのファンは、どんな方が多いんですか。

犬山 子どものイメージがあるかもしれませんが、実は中高年が多いんです。アイドルの追っかけと同時並行していたりするので、遠征慣れしてるんですよね。元バンギャ、元ジャニオタ、元ヅカファンといった、“卒業組”も結構います。キャラクターには熱愛スキャンダルもないし、安心して追っかけできるのかもしれません。また、子育てが一段落して、子どもや孫に近い感覚で愛でる対象を求めた末、母性や父性を注げる相手として、キャラにたどり着いた人もいるようです。

 特にコアなのが、千葉県船橋市非公認ご当地キャラクター「ふなっしー」のファン。何年か前に行ったイベントでは、どうやってたどり着けばいいのかもわからないような陸の孤島にまで、ファンが大挙して訪れていました。一時期メディア露出が多かったため、今は「干された」と思われがちですが、グッズの売れ行きも相変わらず好調で、船橋・ららぽーとTOKYO-BAYにあるふなっしーグッズ専門店「ふなっしーLAND」は、“優良テナント”と言われているそうですよ。

――しんじょう君しかり、そこまで熱狂的なファンを集めるということは、戦略的な運営がハマっている感じがしますね。

犬山 しんじょう君は、須崎市市役所に勤務する、守時健さんという方が運営を担当されています。“超公務員”と呼ばれるほどのやり手ながら、普段は大仏のお面をかぶって写真に写ったり、テレビ出演したりしています(笑)。一時期世間を騒がせた「ちぃたん☆」との著作権問題も、彼の幅広い人脈に端を発したもので、「行政だけではできない新しい試みを民間企業に託してみよう」というチャレンジからでした。しかし、最初はきちんと協力関係を結べていたものの、背後で糸を引いている人たちに問題があり、だんだんと制御が利かなくなったんでしょうね。

――そこまでの人気キャラクターになるには、今、何が求められるのでしょうか。

犬山 一昔前までは、ビジュアルの良さよりも、北海道山越郡長万部町の「まんべくん」のような“面白さ”が求められていましたが、今は「結局、かわいくて面白いのがいいよね」という、贅沢な段階に来ているように思います。それと今、キャラクターの主戦場はTwitterです。彼らがどんな投稿をするかで、人気度が変わってくるんです。特に面白いのは「しんじょう君」と、埼玉県志木市文化スポーツ振興公社の公式イメージキャラクターの「カパル」。特にカパルは24時間体制でリプライをくれて、ファンから“ツイ廃”と呼ばれています。

――それって、行政の人がやってるんですよね? 24時間体制となったら、「ブラックだ!」「パワハラだ!」と声が上がりそうですが……。

犬山 いえ、むしろ逆なんです。キャラクターを担当している行政の人は、「もっとやりたいのにやらせてもらえない」というジレンマのほうが強いようです。役所って、たいていの部署はちょっとでもサボると「税金泥棒!」と罵られるのに、キャラクターと一緒だと、「ありがとう」「お疲れさま」と優しい言葉をかけてもらえるんですって。どんなに頑張ってもクレームしかこない中で、正当な評価をもらえるのが、キャラクター担当だけなんです。だからやりがいがあるし、カパルに限らず、ゆるキャラの担当者は1件でも多くファンにリプライしたいという気持ちがあるようです。

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