カルチャー
『ブスの自信の持ち方』著者インタビュー(前編)

「ブスVS美人」は“男”がつくった構図――山崎ナオコーラ氏が語る、美醜問題の元凶とは?

2019/08/12 17:00
安楽由紀子

山崎ナオコーラさん

――本書には、お笑い番組などが、ブス“キャラ”芸人を使って、「美人女優さんやモデルさんに向かってケンカをふっかけさせる」演出をすることについても触れられています。ブス“キャラ”芸人とブスの関係性についてどう思われますか。

山崎 ブスキャラ芸人さんと美人によるケンカのシーンというのは、つまり、男性がつくった美醜の序列において下位にいる女性が上位の女性をバッシングしたり、うらやましがったりする……そうすると男性が“一段高い”ところに行くことができ、「ただ見てる側」の人になれる、という構図を作っているんだと思うんです。それは、男性にとっては生きやすい社会に違いありません。男性からのそういう需要に応えるために女性同士のケンカのシーンが演じられるんでしょうね。でも、ブスに美人の悪口を言わせるという番組の作り方は古いと思います。序列に関しての文句を言うべき相手は美人ではなく、ヒエラルキーを作り、「下にいる人(ブス)は、上にいる敵(美人)を攻撃しろ」とあおってくる人たち。現実の女性同士の関係においては、「ブスVS美人」はまず起こりませんし、そもそもお互いをバッシングする理由がないので、普通に友達になることが多いです。

――バラエティ番組では、ブスキャラ芸人がイケメンタレントに媚びるシーンもよく見かけます。

山崎 ブスキャラ芸人さんが、自虐ネタを言わされたり、イケメンタレントに媚びることを強いられたりするシーンは、「ブスのキャバクラ」といったものに私には見えます。テレビ番組では、「私は美醜の序列で下位にいるけれど、頑張ります。男性が微笑んでくれるだけでうれしいです」という謙虚な態度でいることをブスに強いることがよくありますよね。男性のタレントさんがブスキャラ芸人さんに対して「ブスを恋愛対象にしない」という姿勢を見せて笑いを取ろうとすることもありますが、「ブス」だってたとえイケメンだろうが好きでもない男性から恋愛対象に見てもらったところでうれしくもなんともないないですし、恋愛に興味がない人もいます。本当は、ブスキャラ芸人さんの世界はもっと広いと思うんですけどね……。ブス同士で笑えるブスネタや、容姿差別のある社会をブス側から批評する笑いを作ることもできると思うのですが、テレビ番組やお笑いの世界は「古い男性」が多くて、なかなかブス発信での制作が難しいのかもしれません。でも、新しい価値観の萌芽は感じられます。私は渡辺直美さんが大好きで、写真集も購入し、インスタグラムもフォローしているんですが、自分で考えた新しいセンスを発信していて、昔のブスキャラ芸人さんとは一線を画する仕事をしていますよね。直美さんを見ていると、「時代は変わってきているなぁ」と感じます。あと、オアシズの光浦さんとか、我が道を行く人や、本音を言う人も、少しずつ増えてきていますよね。

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