芸人をタダで見られるムショの慰問――元女囚が獄中で出会った印象深い芸能人
覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■芸人を管理するのが吉本興業の役割
吉本興業が何かと話題ですね。私も大阪出身でお笑いは大好きですし、ダウンタウンなど吉本の芸人さんのファンでもあるので、気にはなっています。早く落ち着いてほしいです。
もともと昔の芸人さんは「芸以外」のことは超テキトーやったと聞いています。今でもたまに不倫とか話題になりますよね(笑)。お酒やギャンブル、異性関係の誘惑に弱いから、そこをうまいこと管理するのが吉本興業のような会社の役割なんでしょう。
芸人さんを甘やかさず、でも厳しすぎず、がんばっておもろい芸を磨いてもらう……。難しいことやと思います。コワモテやないと、言うことも聞かない芸人さんもいてるでしょうしね。そういう厳しい世界で有名になって、テレビ番組でレギュラーを持つなんて、ホンマに大変なことです。会社も世間も、もう少しいろいろゆるくなってほしいなあと思っています。
■獄中(なか)で見られる一流の芸
読者の皆さんは、芸人さんの芸をナマでご覧になったことがありますか? それをタダで見られる(かもしれない)のがムショです。
今は、法務省の「矯正支援官」という役職があって、トップの「特別矯正監」である杉良太郎さんのほか、噺家の桂才賀さん、コロッケさん、石田純一さん、刑務所のアイドルPaix2(ペペ)のお2人、EXILEのATSUSHIさん、元AKB48の高橋みなみさんなどが就任されています。ちなみに浜崎あゆみさんは、すぐにやめられてますね。杉様に「差別された」そうです。
この矯正支援官になると、ムショまでの交通費など実費は出るそうですが、もともともうかるものではないですから、それをわかって来てくださる皆さんには感謝しかありません。慰問のある日は缶ジュースやお菓子も出るので、懲役はとても楽しみにしています。
そして……たまにプロの「慰問」ではなく、「拷問」といわれるご近所のカラオケ同好会の「歌謡ショー」や、幼稚園や保育園の子どもたちのお遊戯会などもあります。地元のおじいさんたちのカラオケを黙って聞かされるのはホンマ微妙なんですが、目の前のオバハンたちの「正体」を知らない小さな子たちが一生懸命歌ったり踊ったりしているのは、子どものいる懲役(私もです)には胸に迫るものがありましたね。
こういう時はシャバで待っている子どもたちに申し訳なくて、「ああ、もうシャブなんかやったらアカン。ムショなんか来たらアカン」とかマジ思うんですが、また戻ってきちゃう。その繰り返しでした。