コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

女性天皇の皇位継承問題……「結婚は許されない」伝統に逆らった女帝【日本のアウト皇室史】

2019/07/27 17:00
堀江宏樹

堀江宏樹さん(撮影:竹内摩耶)

――光明皇后はある意味、図太かったのかもしれませんね。

堀江 そう。しかも、聖武天皇とは夫婦仲もすごく良くて、今で言うダブルベッドで寝ていました。ちなみに、聖武天皇と光明皇后の“愛の暮らし”の遺品が、奈良の正倉院に保管されている正倉院御物(ぎょぶつ)です。奈良では、毎年秋の風物詩として「正倉院展」が開催されますが、今年は令和元年ということもあってか、東京でも正倉院展が開催されるんですよ。ぜひ行ってみてください。ダブルベッドは出品されるか知りませんが……(笑)

――ほかに男性皇族がいたのに、聖武天皇と光明皇后の一人娘が、“オトナの事情”で女性天皇になってしまったと聞いたことがあります。                     

堀江 有力な男性皇族たちが、ちょうど流行った疫病でバタバタと亡くなったと伝えられていますが、ホントは毒殺されたのかもしれません。いずれにせよライバルたちの病没によって、彼女は、史上初にして現時点では“唯一”の女性皇太子となりました。これが21歳の時で、まだ独身。そのまま帝王教育を受け、女帝として即位したことも異例です。

――運命に選ばれた、“特別”な女性とも言えそうですね。

堀江 良い意味でも、悪い意味でも、唯一無二の存在感を持つ女帝でしたが、同時にとても賢い人だったようです。ちょうど孝謙さまが即位する少し前、絶対に女帝の即位を認めなかった中国で、則天武后(武則天)という女帝が誕生しているんです。まぁーね、世界史の読み物の中では、スケベでビッチ、権力と欲の塊で悪女扱いされがちなのが則天武后なんですけど、「女性でも国のトップとして辣腕を振るうことができる!」と、証明した点では、孝謙さまにとって心の支えだったかもしれません。孝謙さまの時代は、元号が異例の漢字四文字なんですが、これは則天武后の中国の元号と同じ形式なので、影響を受けていたことを推測できます。

 次回は、そんな孝謙さまが入れ上げた“巨根”の僧侶との関係、国民から嫌われるに至った背景を深掘りします!

堀江宏樹(ほりえ・ひろき)
1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。2019年7月1日、新刊『愛と欲望の世界史』が発売。好評既刊に『本当は怖い世界史 戦慄篇』『本当は怖い日本史』(いずれも三笠書房・王様文庫)など。
Twitter/公式ブログ「橙通信

最終更新:2019/09/18 15:36
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