ZARAが抱える2つの地雷――「日本ではユニクロに勝てない?」「パクリ問題連発」好調の裏側
とはいえ、世の中に完全無欠の企業は存在しません。ZARAにも、わずかばかりではあるものの、懸念材料はあります。まず、我が国市場に限っていえば、ZARAの総売上高は伸び悩み・停滞が見られるのです。ZARAジャパンは売上高を公開していないので、詳細はわかりませんが、小島ファッションマーケティング代表取締役・小島健輔さんは、独自の情報網から入手したという「数字」を、ニュースサイト「商業界オンライン」の2019年4月配信記事で公開しています。それによると、インディテックス系日本法人の売上高について、18年度は前年実績から76億円減少した約690億円と類推しており、19年に入ってから復調したとは聞かないため、よくても現状維持、悪ければさらに売上高は低下していると考えらえます。また国内の店舗数も18年からは増えていないばかりか、逆に減少傾向にあると指摘されています。
代表的な事例でいえば、旗艦店の一つとされていた大阪・心斎橋店が、移転のため閉店しました。そしてその後、ドラッグストア「ココカラファイン」が入店したのです。インバウンド客で賑わう心斎橋筋商店街は現在、アパレル店がどんどんと減り、その跡地にドラッグストアが入店するということが続いて、「ドラッグストア商店街」へと急速に変貌しています。
店舗というのは、家賃交渉や契約更新などのタイミングがあり、一概に「不調だから撤退した」とは言えない場合がありますが、アパレル店に比べてドラッグストアは売上高が全般的に高いため、家主がアパレル店を排除してドラッグストアに貸したがるということが増えています。ある有名アクセサリーブランドの元役員によると「ドラッグストアのトップ店舗の売上高は月額3億円もある」とのこと。年商にすると1店舗で40億円くらいあることになり、アパレル店の10倍ほどになります。詳細は明かされていませんが、恐らくZARAの心斎橋旗艦店も同様だったのではないかと考えられます。ドラッグストアの勢いには遠く及ばなかったということではないでしょうか。
ZARAの商品は一般的に「ファッション性が高い」と言われ、店頭を見てもらえば一目でわかりますが、ユニクロに比べて「着こなしが難しそう」な商品が数多く並んでいます。そうなると、いくら「百貨店向けブランドよりも半額くらい安い」とはいえ、購買客数の上限はそう高くはならず、ユニクロのようにマス層には広がりません。田舎の老人までもが着用できるようなことには絶対にならないのです。現在、推定されている700億円内外というのが、我が国市場におけるZARAブランドの限界点ではないかと考えられます。ZARAを好むような「おしゃれな客層」をあらかた獲得し尽くしたのではないでしょうか。