コラム
勝ち組ZARAの死角は?

ZARAが抱える2つの地雷――「日本ではユニクロに勝てない?」「パクリ問題連発」好調の裏側

2019/07/28 18:30
南充浩
ZARA公式サイトより

――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!

 先進国で服が売れにくくなっている状況下において、世界規模でみれば売上高トップを独走し、その成長率と高利益率で注目を集めるのが、主力ブランド「ZARA」を擁するインディテックス社です。全世界の売上高は3兆円を超えています。

 今回は、そんなZARAの我が国における状況――好調の裏側にある“懸念材料”までを見てみたいと思います。

 「各人がすでに大量の洋服を持っていて、新しい商品に手を伸ばさない」という背景から、洋服の販売不振、過剰在庫が取り沙汰される我が国のアパレル業界ですが、ZARAはそうした環境には左右されていないと言われています。さまざまなメディアで報じられている通り、その秘密は、「高速回転による多品種小ロット生産」だとされています。これは、多くの種類の商品を少量ずつ作って店頭に投入し、小刻みに新たな商品へ入れ替えていくスタイルです。

 ZARAとは違い、通常のアパレルブランドは「目玉」となる商品をたくさん作り置いて、徐々に売り減らすという手法を取ります。その理由は、

1.1枚当たりの生産コストが引き下げられ、粗利益額(商品の販売価格から仕入原価を差し引いた金額)が大きくなりやすいため
2.糸、生地の生産を考慮すると、少なくとも半年以上のリードタイム(発注あるいは製造開始から納品までの時間)が必要となるため
3.生地や副資材(ボタン、ファスナー、芯地など)の製造・仕入れコストが抑えられるため
4.サイズ切れや色柄切れなどの欠品による機会損失を防ぎやすいため

などが考えられます。

 この手法を極限まで突き詰めたブランドが、ユニクロだと言えます。通常、メディアでは「ファストファッション」と分類されがちなユニクロですが、実は企画から店頭投入まで1年以上かけている「スローファッション」なのです。1型当たりの生産数量は最低でも数十万~100万枚となり、売れ行き不振で生産調整を行っている我が国のほかのアパレルとは、一線を画す生産量を誇っています。

 一方、ZARAは多品種小ロット生産で知られています。これによって、売り場の新鮮さがいつも保たれるだけでなく、「値下がりまで待っていては売り切れる」という焦燥感から、消費者は定価で買うケースが増えます。この売り方こそ、「各人がすでに大量の洋服を持っている」という我が国をはじめとする先進諸国に適したシステムだとされているのです。通常、多品種小ロットを高速で投入し続けると、1枚当たりの製造コストがかさみ、商品価格は高くならざるを得ませんが、ZARAの場合、店舗数は全世界では2,000店を超えます。つまり1店舗に1型当たり10枚ずつを配送するとしても、総生産数量は2万枚となるので、商品価格を百貨店向けブランドの約半分に抑えることができるのです。

 ZARAはこの企画生産システムを導入することで、成功を収めてきたわけですが、ほかのアパレルがこれを導入することは容易ではありません。なぜなら、常に先を読む企画体制が必要となりますし、高速で次々と新型を生産する仕組みや、各店に商品を送付する物流システムが必要となるからです。このため、ZARAの優位は中期的には変わらないだろうと考えられています。

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