京アニ放火事件、33人死亡のショックーー「心神喪失で無罪は許さない」の声に弁護士の見解は?
京アニ放火事件に関しても同様に、裁判で弁護側が心神喪失・心神耗弱状態を主張するのではないかと、ネット上で指摘されている。
「今回の事件においては、犯人性(犯人ではないこと)を争うような弁護活動は無理ですし、情状を酌んでもらうような弁護活動も無理でしょう。となると、“お決まり”のように、心神喪失・心神耗弱を主張するなどといった弁護活動がなされるでしょうが、報道によれば、青葉容疑者は犯行直後に『パクられた(真似された)』と、動機のようなことを口にしていたとのこと。そのような状況であったならば、心神喪失・心神耗弱を主張するような弁護活動も、まず無理でしょう。公判において、もし青葉容疑者が罪を認めるのであれば、弁護人は余計な弁護活動をするべきではないと考えます」
また、33人もの犠牲者を出した重大な事件という点において、「刑法第39条の適用」に反対する声も出ているが、「事件の大きさと刑法第39条適用の有無は関係ないので、心神喪失が認められるなら、無罪にもなり得るでしょう」と山岸氏は言う。
「検察官は、起訴するにあたり『刑法第39条が適用され、無罪にならないこと』『刑事責任を問えること』をしっかりと検証した上で、起訴しているのです。つまり、無罪になることを避けるため、検察官は“精神的に問題がある”人物を『あえて起訴しないこと』ができるのです。もちろんその場合、精神病院への強制入院など、その他の措置がありますが、こうした背景から、刑事裁判において刑法第39条が適用されるケースは稀になります」
なお、現在、青葉容疑者は、重体であると報じられている。もし今後、死亡した場合だが、それでも「事件」は存在するため、警察はその終了処理を行うといい、「被疑者死亡のまま書類送検、要するに、まず、一連の捜査を行った警察が証拠などの関係書類一式を検察庁に送検し、その後、検察庁が不起訴として終了することになる」そうだ。
青葉容疑者に関しては、事件発生の数日前に近隣住人とトラブルになっていたという報道も。近隣住人はマスコミの取材に対し、青葉容疑者に胸ぐらをつかまれ「殺すぞ。こっちは余裕がないんだ」とすごまれたことを、明かしていた。
「昨今、鬱屈した環境にある成人が、突然、このような重大事件を引き起こすことが繰り返されています。基本的人権の尊重と社会的正義を実現する立場にある弁護士である以上、なかなかはっきりとは言えませんが、重大事件を引き起こす可能性のある人間に対しては、警察職員が注意を怠らないようにすべきだと私は考えます。具体的にそういった人物を定義することは非常に難しい問題ではあるものの、周辺住民からの当該人物に関する連絡や相談などを真剣に聞き、早い段階から訪問するなどして把握することは必要と感じます」
事件の全貌が明らかになるには、まだ時間がかかりそうだが、真相が解明されること、そして何より今回負傷された方々の一日も早い回復を祈らずにはいられない。