芸能
『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』なにが三次郎をそこまで銭湯に駆り立てるのか「ボクは梅湯の三次郎~野望編~」

2019/07/16 17:53
石徹白未亜
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月14日放送のテーマは「ボクは梅湯の三次郎~野望編~」。京都で廃業寸前の銭湯を人気店に復活させた男が二号店に挑む。

あらすじ:廃業寸前の銭湯を軌道に乗せた三次郎、「野望」の二号店へ

 大学時代に銭湯に魅了され、全国の銭湯を巡った湊三次郎は廃業寸前の京都「サウナの梅湯」を25歳で引き継ぐ。3年後、梅湯を軌道に乗せた三次郎は、二店舗目として滋賀県大津で店主が亡くなり休業していた銭湯「都湯」の経営にも乗り出す。三次郎とスタッフたちの奮闘の日々を追う。

銭湯に行ったことがなくても、なぜか懐かしい

 私は「スーパー銭湯」や「スパ」は行ったことがあるが、三次郎が経営するような「銭湯」には一度も行ったことがない。近所にないからだ。東京都のサイトを見ても、平成17年に1,025軒あった銭湯は、平成29年には562軒とほぼ半減している。

 銭湯は都道府県ごとに入場料の規定があり、梅湯、都湯のある京都府と滋賀県の入浴料は大人430円だ。なお一例だが、全国でスーパー銭湯を運営する「極楽湯」奈良店は入館料440円(店舗ごとに料金が異なる)で、ほぼ銭湯と同額。金額が同等であれば、設備が充実している方が魅力的に思えるものだが、その点、銭湯はスーパー銭湯やスパに比べて見劣りしてしまうだろう。

 一方で、スーパー銭湯やスパにない銭湯ならではの魅力は、そのレトロ感だ。「レトロ風」に新しく作られた観光施設は薄っぺらさがあるが、梅湯も都湯も昭和の面影が残る本物のレトロだ。新興住宅地に育ち、銭湯に一度も行ったことがない私ですら、梅湯の外壁にある「サウナの梅湯」というネオンが、夜空にほんのり光っているのを見たとき、心の中の「三丁目の夕日」がくすぐられグッときてしまった。

 「経験したことのないものを懐かしく感じる」とは不思議な感覚だが、これこそ銭湯が共通したイメージを想起させる「文化」であることの表れなのだろう。

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