コラム
老いゆく親と、どう向き合う?【8回】
認知症の義母の介護中に、倒れた夫……ダブル介護を背負った嫁 【老いてゆく親と向き合う】
2019/07/14 19:00
そうして3年ほどたった。ヨシエさんの足腰が弱くなってきたと感じていたある日、いつものように実家に寄って出勤しようとした公男さんが倒れた。脳出血だった。
「高血圧だったのに、何かと理由をつけて薬も飲んでいなかったので、いつか倒れるんじゃないかとヒヤヒヤしていました。運悪く、倒れたのは義母がデイサービスに行ったあと。義母がデイサービスから帰って、送ってきたスタッフに発見されるまで7時間くらい放置されることになりました。パート先に電話が来て、『義母に何かあったのかな』と思って出たら、義母ではなくて夫だったんです」
意識がもうろうとしていた公男さんは、手術を受けた。
「手術後はずっと眠った状態だったので、10日ほどたって目を開けて言葉を発したときには、娘たちと思わず歓声を上げました」
こうして、千恵子さんにとってはダブル介護が、公男さんにとっては過酷なリハビリがはじまったのだ。
――次回(7月28日更新)に続く
坂口鈴香(さかぐち・すずか)
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。
■【老いゆく親と向き合う】シリーズ
・介護施設は虐待が心配――生活が破綻寸前でも母を手放せない娘
・父は被害者なのに――老人ホーム、認知症の入居者とのトラブル
・父の遺産は1円ももらっていないのに――仲睦まじい姉妹の本音
・明るく聡明な母で尊敬していたが――「せん妄」で知った母の本心
・認知症の母は壊れてなんかいない。本質があらわになっただけ
最終更新:2019/07/16 18:16