坂上忍、32年前の「工藤夕貴との確執」暴露――「オトコの方がしつこい」言説を考える
オトコとオンナ、どちらが「しつこい」のかは、人それぞれなわけだが、現在の日本、さらに芸能界に限定して言うのなら、オトコの方が「しつこさ」を発揮できるのではないだろうか。
相手が気づいているのかは不明だが、一緒に仕事をした人に対して、思うところがあるというのは、よくあることだろう。しかし、よっぽどのことがなければ、そこには触れず、うやむやのままで終わる。
その思うところが明るみに出るのは、どういう時かというと、被害を受けたと思っている側が「大出世」したときではないだろうか。俳優としてキャリアを積んできた坂上だが、近年は『バイキング』(フジテレビ系)をはじめ、多数のバラエティ番組で司会を務める日本有数の売れっ子と言える。芸能界では「何を言うかより、誰が言うか」が重視されると私は思っているので、売れっ子が「被害に遭った」と言えば、番組は時間を割いてくれて、その「しつこさ」は日の目を見る。
しかし、女性芸能人は坂上のような出世パターンをなぞることが難しい。バラエティ番組は多数あれど、なぜか司会者は男性ばかりで、女性はアシスタントどまり。その多くはアイドルなど、若い女性である。ベテランの域に達した女性で、全国ネットの番組のメイン司会者となっている人は、ほとんどいないのが現状ではないだろうか。つまり、女性は出世できないので、「あの人から、こんなことされました」と被害を訴える機会を持たないとも言えるのだ。
とは言いつつ、見方を変えれば、生き馬の目を抜く芸能界の一線で活躍する人たちは、男女とも自分に自信があり、サバイバルがうまく、容易にへこたれない人たちと見ていいだろう。結局、オトコ(オンナ)だから「しつこい」のではなく、売れっ子はみんなそもそも「しつこい」という“性質”を持っているというのが、芸能界なのではないだろうか。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。