サイゾーウーマンカルチャー社会被害者支援弁護士語る報道の問題点 カルチャー インタビュー 遺族は“顔写真の入手”に傷ついている――被害者支援の弁護士が語る「マスコミの問題点」 2019/07/09 19:30 サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman) インタビュー社会 「被害者報道はいらない」は危険 ――ネット上では、「被害者報道」自体の必要性について議論する向きもあります。 武内 「被害者報道はいらない」という論調は危険です。もし被害者が、加害者を長年DVで苦しめ続けてきた人物だとしたら、それでも実名報道は必要ないと思いますか? また、もし国会議員が刺されたりしたら、歴史的事実として記録しなければいけませんし、実名で報じるのは当然でしょう。「被害者」などと、大きな主語で議論を行うのは大変危険だと感じます。さらに、事件発生直後は「何も考えられない」という状態だったご遺族の方も、時間がたつにつれて、犯人の逮捕や、裁判の開始、判決が出たタイミングで、「私たちの気持ちも知ってほしい」と思うことがあります。その声を多くの人たちに届けるのはマスコミの仕事です。 ――今、被害者報道が注目されていますが、今後の課題についてどう思われますか。 武内 かつて、マスコミによる被害者報道をめぐっては、取材方法にしても、報じられ方にしても、もっと大雑把なものだったと思います。しかし今では、インターネットを通じて、被害者側が声を上げることができるようになったので、問題視されだしたのだと思います。一方、そのネットの発達が、被害者側の負担になるケースもある。ネットのない時代は、実名報道されても、後になってその情報を調べることはなかなか難しいことでしたが、今はネットで検索すると、すぐに名前が出てくる。アーカイブの質が激変し、誰でも簡単に過去の情報にアクセスでき、しかもそれが消えないのです。今、被害者報道が注目を浴びているのは、こうした背景があると見ています。 私の今後の課題としては、先ほども言っていたように、被害者側に、無料で弁護士がつくという制度の存在をもっと世に広めること。一方、取材サイドに関しては、今回のような取材依頼が来ること自体が「変わっていっている兆し」とも受け止めています。また、実際に「実名を出さずに済む場合は匿名で」というケースも出てきましたし、相模原障害者施設殺傷事件では、警察がご遺族の意向などを理由に、19人の犠牲者を匿名で発表する対応を取りましたが、各社それぞれ実名か匿名かを検討し、「ネットの記事、第一報以外には実名を載せない」などの対応を取ったと言います。マスコミ側にもっと報道の在り方――「なぜ報じるのか」という点を考えていってほしいと願っています。 武内大徳(たけうち・ひろのり) 弁護士。神奈川弁護士会。1999年から被害者支援に携わる。著書に『犯罪被害者等基本計画の解説』(番敦子氏、佐藤文彦氏との共著/ぎょうせい)などがある。 前のページ1234 最終更新:2019/07/09 19:30 Yahoo 犯罪被害者等基本計画の解説/番敦子,武内大徳,佐藤文彦【著】 「被害者支援の弁護士」の存在が知られますように 関連記事 「ViVi」自民党企画が波紋――軍地彩弓氏が語る「もし私が女性ファッション誌で政治を扱うなら」娘と性交する父親は「許されない」のに「無罪」――日本の「近親姦」をめぐる“捩れ”娘と性交した父親が無罪――性暴力サバイバーが「つらいし、悲しいし、おかしい」事件と判決を語る15年にわたる実父の強姦が黙殺された「栃木実父殺し」から現在――社会に排除される女性と子どもセレブ家庭で虐待は起こらない? 南青山児相建設計画、元児童福祉司が語る「反対派」の盲点 次の記事 石原さとみ破局で気になる報道 >