カルチャー
東京新聞記者・望月衣塑子氏寄稿

女性は「容姿を問われて当然」なのか――望月衣塑子氏が語る、ジェンダーの後進性が生む“損失”

2019/07/03 21:00
望月衣塑子

 そんな環境を生んだ責任の一端は、マスコミにもある。「美人作家」「美しすぎる弁護士」などといった報じ方はやめてほしい。「ミスコン」のように外見の美しさを競うジャンル(その是非についても議論があるが、紙幅の都合上、ここでは触れない)を除けば、本人の能力や努力と外見は何の相関も因果関係もない。なのに、マスコミが見た目のイメージをセットにして伝えれば、受け取る側は「女性は容姿も問われて当然」と思ってしまうではないか。

 もちろん、男性も「イケメン」などと書かれることはある。だが、女性のほうがより顕著だろう。かわいければたくさんのスポンサーがつくから? “美人”と見出しに入れれば媒体を手に取る男性が増えるから? 見目麗しい人を愛でるのはその人の勝手だ。ただ、「『美人』『かわいい』と書いておけば本人も嫌がらない。ハラスメントにならない」という安易な考えで、気軽に使ってはいないだろうか。それは外見を「抱き合わせ」で報じることの免責理由にはならない。このような報じ方をすれば、同時に「ブスのくせに」「女らしくない」という差別意識を生むからだ。この点、広告をはじめマスコミ業界が率先して自省し、抑制するべきだと思う。

 ジェンダー問題の後進性が損失を生んでいるケースは、他の分野でも見られる。私がこのブログを読んで思い返したのが、ブロガー・はあちゅうさんのケースだ。

 17年秋以降、米・ハリウッドから世界に広がった「#MeToo」のムーブメントで、日本ではジャーナリスト・伊藤詩織さんの会見を皮切りに、作家の森まゆみさん、元厚生労働事務次官の村木厚子さん、はあちゅうさんらが次々と過去の被害を打ち明けた。はあちゅうさんは、告発に7年を要したとし、その理由について、「忘れられない私が人間的に未熟だ」と思っていたから、と語った。自分の責任に落とし込んでしまうのが、今回の件と共通している。その分析は誤っている。でも、そう思い込まされてしまう環境に、私たちはいまだに置かれている。私はそのことに最も怒りを感じるし、一抹の後悔がある。

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