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インタビュー

オンナたちの釜ヶ崎――圧倒的「男性社会」で生きてきた「私娼」「女性ホームレス」の姿

2019/06/15 19:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

 2005年から釜ヶ崎に関わり、野宿生活者の支援運動などを行ってきたという佐藤零郎氏は、確かに釜ヶ崎には、多くの人がイメージするように「圧倒的に女性が少ない」という。そんな中、なぜ『月夜釜合戦』で釜ヶ崎の女性を描こうと思ったのか。その背景には、「釜ヶ崎の再開発」があるそうだ。

「釜ヶ崎で生活をする中で、監視カメラの設置や露店の撤去、路上で暮らす人たちのテントが潰されるなど、野宿生活者や日雇い労働者を街から追いやるような動きを感じました。これは全世界的に見られる『ジェントリフィケーション』という現象で、アクセスがいい都心部の比較的地価が安い場所を再開発することにより、地価を上昇させ、その利潤を得るというものなのですが、僕は資本が利潤を得るために貧乏人が追い出されるなんて、大問題だと思い、対抗したいと考えたんです。いろいろ調べていくと、釜ヶ崎でジェントリフィケーションが起こったのはこれが初めてではないことがわかった。1970年に大阪万博が開催されましたが、60年代から日雇い労働の供給を増やすために、働き口のない地方の男性を釜ヶ崎に一挙に集め、その過程で地区内に占めるドヤの割合は増加し、単身男性の労働者向けの部屋になり、徐々にドヤは高層化・巨大化していきました。結果、地区内に家族層が暮らせるような家屋の割合は減っていき、女性や子どもが釜ヶ崎を後にしなくてはならない状況が生まれました」

 現在、釜ヶ崎の再開発に関して、自治体は「労働者の高齢化が進み、街が衰退していく。今のうちから、女性や子どもが住める街にしよう」と説明しているというが、「そもそも女性や子どもが住めない街にしたのは誰なんだ! と。『釜ヶ崎の歴史の中には、女性もいた』とことで再開発の欺瞞を映画で突きたくて、主人公を女性にしました。なので、『月夜釜合戦』は、特定の時代設定があるわけではなく、釜ヶ崎の“変遷”の厚みを凝縮して描いていると言えます」。

 『月夜釜合戦』の主人公・メイは私娼をしており、ほかにも釜ヶ崎のほど近くにある飛田新地の公娼・アケミが登場する。また出演シーンはわずかながら、路上生活者と思しきマッチ売りの老婆(マッチの火が消えるまでの間、股座をのぞくことができるという商売をする老婆)の姿もあったが、監督は彼女たちを「釜ヶ崎を女性の住める街にするという言説からは除外される、排除されんとする女性たち」として捉え、劇中に登場させたという。飛田新地で働く女性は現在も大勢存在しているが、私娼やマッチ売りの老婆は、すでに現在の釜ヶ崎では姿を見かけない女性たちだ。

「マッチ売りの老婆は、釜(ヶ崎)にいるおっちゃんに『おったぞ』という話を聞きましたし、また開高健氏の『日本三文オペラ』(角川書店/1950年代後半、大阪造兵廠跡のスクラップを狙う食いつめ者たちの集団・アパッチ族を描いた小説)にも登場し、そこから着想を得ています。大々的にこの商売をやっていたわけではなかったでしょうが、人目を避け、陰でこっそりそういった商売をして、生きていた女性が釜ヶ崎には存在した。今も表立っていないだけで、私娼もマッチ売りの老婆もいるでしょう」

 また、映画では直接的に描かれていなかったが、60年代に男性の街に変貌しつつあった釜ヶ崎には、「労働者」として働く女性もいたそうだ。

「土工と言って、現場の雑用をするといった仕事をしていた女性がいました。実際、炊き出しに並んでいる高齢の女性に『昔はどんな仕事をしていたんですか?』と聞くと、『日雇い労働していた』『飯場の飯炊きをやってた』という人に会うことがあります。しかし、産業の合理化……つまり、女性より男性の方が労働力になるからという理由で、それまで女性が担っていた仕事を男性が行うようになって、やはり釜ヶ崎から女性がいなくなっていったわけです。今も昔も変わらないのは、資本は利潤を追求するために、この街を都合よく利用してきたということです」

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