介護職が明かす「パワハラ」「セクハラ」問題の今、「高齢者にも性欲を感じる権利がある」が……
50代女性。療養型医療施設、訪問看護師、有料老人ホームなどを経て、現在はリハビリテーション病院勤務
訪問看護では、言葉のセクハラはありましたが、こちらは看護師だし、向こうには家族もいるのであまりひどいものはありませんでした。精神疾患や反社会的勢力などの本当に危なそうな人のところには、一人ではいかないとか、年配の看護師が行くとかの対応はしていましたが、事業所としては2人で行くというのはコスト的に難しいでしょうね。
現在勤務している回復期のリハビリ病院は、入院期間が長く、認知症の患者さんも多いので、環境としては高齢者施設と大差ありませんが、病院としての対策は以前からしっかりしています。そもそも高齢者はセクハラなんて言葉のない時代に生きてきた人だから、お尻を触るなんて当たり前。しかも病気で前頭葉の働きが低下している人なんて、昔は厳格だったという男性が「お姉ちゃん、●●さんを指名するにはどうしたらいいの?」とか、部下が見舞いに来ているのに「ズボンに手を入れて」と言ってきたり、枚挙にいとまがないほど。こっちは下の世話をしているのに、何を今さらみたいな感じですよ(笑)。
病気のせいで、これまで理性で抑えていたものがなくなってセクハラをする人をやめさせるのは難しいですが、頭ははっきりしているのに故意にやる人には「家族に伝えます」と言います。さらにひどくなると、本人と家族に主治医や師長から、「今は時代が違います。職員も嫌がっているので、あまりひどいとここにはいられません」と厳重に注意します。セクハラをするのは痴漢と一緒。ターゲットとなるのは若い子です。相手を見極めてやっている。だから、担当を替えたり、役職者が注意すると、一定の効果は出ます。医師などは注意したあと、ちゃんとフォローもしてくれています。上に立つ人の態度が重要だと思いますね。ちなみに、男性介護職も看護師も、股間を触られたり、セクハラ発言をされたりというのはあるものの、女性従事者ほど同情されない傾向はありますね。
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お話を聞かせてもらった全員が「ハラスメントの経験がある」と口を揃えた。介護現場のハラスメントはそれほど日常茶飯事ということだろう。後編では、事業所側がこの問題をどのように捉えているかについて注目したい。
(後編につづく)