元KAT-TUN・田口淳之介、大麻に手を染めたのは「小嶺麗奈が悪い」という論調に思うこと
『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)で、この供述の食い違いについて取り上げた際、出演者であるビートたけしが「俺が古いのかもしれないけど、俺なら自分が泥をかぶる。元はと言えば、自分のせいなんだから」という趣旨のコメントしていたことが印象的だった。それ以上掘り下げて語らなかったが、恐らくたけしは、芸能人であり、また妻でもある酒井を「守る」ために、自分なら酒井が覚せい剤を使用したことは胸のうちに留めておくという意味だろう。
若い世代にはぴんと来ないだろうが、昭和世代には「男性が女性を守る」という考え方が根付いていた。雅子さまが婚約記者会見で、天皇陛下から「雅子さんのことは、僕が一生、全力でお守りします」というお言葉があり、それがとてもうれしかったとお話になったのも、そういう価値観がベースにあったからである。
たけしの「自分のせい」という言葉は、酒井に覚せい剤を勧めたことだけでなく、夫が普段から「酒井を守っていなかったこと」も含まれるのではないか。酒井の夫は仕事もせず、家のこともやらず、愛人まで作っていたと言われている。
今でこそ、こういうダメ夫はよく話題に上り、バラエティー番組でも取り上げられるが、私の体感としていうならば、10年前の当時「ダメな夫」はまったく笑えない話だった。「ダメな夫と結婚してしまったことは、恥ずべきこと」であり、「夫がダメなのは、妻の操縦が悪いから」という考えが強かったからである。しかし、精神的に追い詰められた時に、人がマイナスのカードをあえて引くことは珍しくない。たけしはそういった世間の風潮を踏まえた上で、覚せい剤を吸引したのは酒井だが、「そうしてもおかしくない環境を作ってしまったのは、オトコのせい」「オンナが悪いわけではない」と考え、さらに夫に酒井を思う気持ちがあれば、ぺらぺらと彼女の立場を悪くするような発言はできないと思ったのではないだろうか。
「この女が悪い」と、女が男を引きずり落としたと考える上沼。ずいぶん前の出来事なので、今はまったく違う意見の可能性も大だが、「自分(オトコ)のせいなんだから、自分(オトコ)が泥をかぶる」と発言したたけし。二人とも、「相手を愛しているのなら、相手のためになることをする」という信条を持っているといえるだろう。
しかし、現実はそう甘くないようだ。
知り合いの弁護士によると、カップルの片方が違法薬物に手を染めた場合、もう片方が「私の力で辞めさせる」と張り切ることはよくあるそうだ。しかし、薬物事件の再犯率の高さからわかるように、薬物をやめるということは簡単なことではない。やめさせるつもりで接していた方も、いつのまにか薬物に取り込まれてしまうことも珍しくないという。
上沼やたけしクラスの社会的地位と収入があれば別だが、「朱に交われば赤くなる」という諺の通り、人は悪い方に流れやすい。もしかしたら、相手のために何かできると思うこと自体、傲慢なのかもしれない。それはさておき、相手がオトコだろうがオンナだろうがヤバいことをしていたら、関わり合いにならずに全力で逃げること。これからは、自分を「守る」ことがパートナーシップの基本になるのではないだろうか。そんなことを思わせた田口と小嶺の事件だった。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。