「マジ、ウケるんだけどー」万引きGメンが四国出張で遭遇した、“2人の少女”への複雑な思い
こんにちは、保安員の澄江です。
今年のゴールデンウイークは、長かったですね。10連休を取られた方も多くおられたようで羨ましい限りですが、私たち保安員の仕事に暦は関係ありません。連休の恩恵をあげれば、通勤利用する電車が空いていて、車内で座れることに小さな喜びを感じるくらいでしょうか。休日は、むしろ依頼が増えるので、連休をもらえることなどないのです。
数年前に一度だけ、四国地方の現場に出張して、連休の勤務に従事したことがありました。とあるクライアントの担当者から、人手不足で保安警備に悩むエリアマネージャーをご紹介いただき、5日間ほど出張することになったのです。四国地方の現場に入るのは、これが初めてのこと。さまざまな不安を覚えましたが、お受けするとなれば、独り身で自由の利く私が担当するほかない状況でしたし、見知らぬ土地で仕事ができる機会も貴重だろうと、思い切ってお受けしたのです。今回は、その時に遭遇した2人の少女について、お話ししていきたいと思います。
出張先の現場は、地元で有名な歓楽街の近くに位置する大型ショッピングモールY。食品のほか、日用品やコスメドラッグ、衣料品などの商品を扱っており、フードコートをはじめ、ゲームセンターや映画館も併設されている大きなショッピングモールです。当日の勤務は、午前11時から。入店手続きを終えて事務所に行くと、銀行員のような雰囲気を持つ40代後半であろう店長さんに、意外なほど歓迎されました。
「ああ、東京から来た保安の方! お待ちしていましたよ。こっちには、私服警備をやられている警備会社が少ないもんですから、困っていたのです」
「そうでしたか。被害は、かなり頻繁にあるのですか?」
「東京の店と比べたら、のんびりしていると思いますけど、ここは比較的ガラの悪い地域なので多いんですよ。常習さんも、たくさんおられるので、みんな捕まえちゃってください。費用もかかっていますし、なんとかお願いします!」
「はい、頑張ります……」
早口で窮状を訴えながらも、費用対効果の成果を暗に求める店長の言葉が、この上ないプレッシャーとなって私に圧し掛かります。期待に応えるべく、気を引き締めて売場に入るも、客数の少なさに愕然とさせられました。連休の影響なのかもしれませんが、東京の現場と比べると、その2割くらいの客入りしかないのです。犯行の多くは人混みに紛れて実行されるので、客入りが悪ければ万引きされる確率も低くなります。たとえ常習者が現れても、一対一の状況に陥ってしまう状況といえ、気付かれることなく犯行を現認するのも難しい状況と言えるでしょう。