「ヴィーガンを強制しているわけではない」動物はごはんじゃないデモ行進の代表に真意を聞く!
――先ほど、例に挙がった豚の妊娠ストール問題に関しては、どうなることが理想だと感じていますか。
岡田 妊娠ストールから解放してあげて、豚たちが相互に遊んだり、「綺麗好き」という元来の習性を発揮できるなど、豚が「正しい扱いを受ける」ことです。そういったところが見られると、やっぱり私たちも安心しますよね。「アニマルウェルフェア」は、動物の福祉を考えるものですが、実は畜産農家のためでもあると思っています。採卵養鶏業で使用される鶏の飼育方法「バタリーケージ」は、ワイヤーでできたケージを連ねて、その中に、鶏たちをほとんど身動きが取れないくらいぎゅうぎゅうに詰めるんです。バタリーケージの中は臭いがすごくて、鶏たちの悲鳴や爪で網を「カチャカチャ」と踏む音が鳴り響いているような状況で、従業員はそこで死体を取り除いていく作業をしたり、異常がないかを1日に何回か確認したりする仕事をしています。従業員も、そういったところで長くは働きたくないと思うんですよね。一方で、「アニマルウェルフェア」に配慮した放牧飼育のところは、農家の方自身も、癒やされる空間になりますし、大きなメリットだと感じます。
また、放牧で飼育してると、動物に使う抗菌薬(抗生物質)やワクチンの投与量も大分抑えられますので、私たち“食べる側”にもメリットがあります。というのも、抗菌薬を投与された動物には薬剤耐性菌が発生するのですが、食や環境を通して人間に耐性菌が伝播し、抗生物質が効かなくなる……といった問題が出てくるんです。こうした背景もあって、国際獣疫事務局(OIE)も「アニマルウェルフェア」の考え方を踏まえた飼養管理の普及を進めています。
――「ヴィーガンを強制をする団体」という世間のイメージと、実際の活動内容にギャップが生じているように思います。
岡田 そうですね。ただやっぱり、皆さんに「行動はしてほしい」という気持ちはあります。例えば、いつも食べている卵を少し減らして、ケージ飼いではなく平飼いの卵を買ってみるとか、東京都庁や内閣府の食堂でも実施されている「ミートフリーマンデー」のように、週に一度は動物や健康のことを考えて肉を減らしてみるとか。私たちは一人の厳格なヴィーガンを作りたいわけではなく、一人でも多くの人がちょっとずつでも動物のことを考えたり、行動を起こすことで、そうすれば、社会は変わっていくのではないかなと思っています。