コラム
女のための有名人深読み週報

男尊思考の強い『バイキング』が低迷――坂上忍に「物言える」女性コメンテーター候補を考える

2019/05/09 21:00
仁科友里
『バイキング』(フジテレビ系)公式サイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「言えよ」野々村友紀子
『今夜くらべてみました』(日本テレビ系、5月8日)

 「女性セブン」(小学館)が、『バイキング』(フジテレビ系)の視聴率が低下していると報じた。同誌によると、視聴率が好調だった『バイキング』だが、『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)に3月の視聴率は全敗、4月もほとんど負けているという。麻薬取締法違反で、電気グルーヴのピエール瀧が逮捕された際、相方である石野卓球のツイートを否定的に報じたり、電気グルーヴの曲を配信したサイトを売名扱いしたことがきっかけとなったのではないかと、同誌は分析している。

 ちょっとしたことで流れが変わってしまうのは、芸能界やテレビ界の怖さかもしれないが、『バイキング』の低迷は、ある種の“積み重ね”の結果ではないかと私は思っている。昼の12時という時間帯から考えて、主婦が主たる視聴者と言えるだろうが、『バイキング』は、男性コメンテーターのキャラは濃いにもかかわらず、女性コメンテーターは目立たない。それは、女性コメンテーターのコメント力に問題があるというよりも、番組側が、はっきり物を言わない女性タレントを好んで起用しているのではないかと思えるほどだ。

 昨年、財務省の事務次官(当時)が「森友問題」に関して取材を行った女性記者にセクハラを働いたことがあった。要は、事件のことをしゃべってほしければ、セクハラを受け入れろと交換条件を出されたわけだが、『バイキング』火曜レギュラー・柳原可奈子は、「それがセクハラだと(私は)気づかなかった」「もっとうまく切り抜けられなかったのか」とコメントしただけで終わってしまう。また、映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインへのセクハラ告発に端を発した「Me Too運動」を取り上げた際、水曜レギュラー・松嶋尚美は、ゴールデングローブ賞授賞式の女優のファッションを取り上げ、「おっぱいが半分見えてるような服はやめた方がいいんじゃないの?」コメント。パーティーで肌を見せることはマナー違反ではないし、「露出しているのだから、セクハラをしていい」と思っているのだとしたら、見当違いも甚だしい。

 司会者というのは、基本的に意見を言わない、もしくは中立の言動を取る立場なはずだが、『バイキング』のMC・坂上忍は、そうとは言えないのではないだろうか。自分の意に染まない意見だと表情が渋くなって食ってかかったり、もしくは自分と同じ意見が出るまで誘導することもある。メインの司会者に「こうコメントほしい」というひな形がある限り、出演者はその意に添わなくてはならないのだろう。視聴者のためでなく、坂上のための番組になってしまうと、視聴率が落ちてもむべなるかなである。

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