元極妻が考える、『ザ・ノンフィクション』ヤクザの更生――なぜ犯罪を繰り返してしまうのか?
ネタバレしない程度に、ザ・ノンフィクションの『母の涙と罪と罰』と『その後の母の涙と罪と罰』の感想を書いてみますね。前回放送と内容が結構かぶっている印象はありますが、前回をご覧になっていない方も多いでしょうから、仕方ないと思います。
前回は、元ヤクザの学さんとそのお母さんの思いを中心に、同じく元ヤクザで牧師の進藤龍也さんとそのお母さん、家族の愛に恵まれたことのないタカシさん(仮名)などのインタビューで構成されていました。
学さんは、ヤクザ現役時代は誰も信じられず、覚醒剤のせいで生死の境もさまよいましたが、キリスト教に出会ったことで人生が変わります。今はお母さんともいい関係だそうです。進藤牧師もやはり覚醒剤に溺れ、若い頃はお母さんに反発していたそうですが、現在の関係は良好です。
このお二人に限らず、親御さんとの関係がいいと更生できる例は、極妻時代から見てきました。逆に言うと、親の愛に恵まれずに育ってしまうと、愛し方がわからず、大切なものが守れないようです。
■居場所のない世の中
今回の主人公・タカシさんは、大切なものを守れませんでした。タカシさんは進藤牧師の教会で学さんと知り合い、共同生活をしていました。学さんは仕事をしていますが、タカシさんは「元ヤクザ」をカミングアウトしているせいか、なかなか仕事が見つかりませんでした。それでもようやく採用され、進藤牧師のお母さんに保証人になってもらってアパートを借りることもできました。
ところが、最初は生き生きと働いているように見えたのに、職場をクビになり、逮捕もされてしまいます。フジテレビの番組案内には、「社会復帰を目指していたが突然の逮捕」とか「うつ病と生活保護そして犯罪に手を……」となっています。
一体、タカシさんに何があったのでしょうか? それはわからないのですが、カメラはうつ病になって引きこもるタカシさんを追います。自立して生活できていたのに、なぜ……と多くの方は思われるでしょうね。
私には、なんとなくわかりました。愛された経験のないタカシさんは、寂しかったのではないでしょうか? とっくに成人しているはずのタカシさんからは、幼さしか感じませんでした。
タカシさんは仕事と部屋があっても、独り暮らしで、仕事から帰っても誰もいない生活に耐えられなかったのだと思います。こういう若者に「甘えるな」と言っても伝わりませんよ。甘えたことがないんですから。
オットの若い衆にも、親の愛に恵まれずに育った青年は何人もいました。部屋住みの生活を「居場所」として楽しめるコは、やっぱりいい顔つきになっていきましたね。かつてのヤクザの組は、家庭に恵まれなかった人の「居場所」でもあったのです。ヤクザがいいとは言いませんし、そもそも今はムリでしょうね。過剰な暴排で、今となってはヤクザにも居場所がありません。これからは、タカシさんのような青年は増えると思います。