コラム
オンナ万引きGメン日誌
女はうまい棒を天にかざし、太ももに叩きつけた! たった「9円」で捕まった万引き犯の顛末
2019/04/13 16:00
こんにちは、保安員の澄江です。
私たち保安員が一番恐れるのは、誤認事故を引き起こすこと。その原因は、主に思い込みや現認不足によるもので、なかでも1点現認(1点だけしか盗む瞬間を確認できないこと)による声かけは、誤認事故の発生リスクが非常に高いと言われています。そのため、2点以上の現認を検挙条件とするクライアントも存在しており、「1点だけなら盗んでもいい」という理屈が成立してしまうような状況に、自分の存在意義を疑ったこともありました。しかし、私の仕事は、万引き犯を摘発すること。たとえ1点であっても窃盗ですし、棚取り、隠匿、未精算という犯行の一部始終を見てしまえば、どうしても声をかけたくなってしまうのです。今回は、一点検挙禁止の店舗で遭遇したセコイ万引き犯の思い出を語りたいと思います。
当日の勤務は、アジア系外国人が多く居住する関東郊外の地域に位置するディスカウントストアA。開店時間である午前9時に出勤して、事務所に上番(勤務開始の報告をすること)の連絡を入れると、電話口に出た部長さんが重く疲れ果てた様子で言いました。
「先週、Aさんの別店舗で誤認事故が連続発生してしまい、現在、契約存続の危機にあります。今日からしばらくの間、一点検挙は厳禁です。なるべく抑止に励んでください」
「はあ?」
不思議なことに、誤認事故は連鎖するもので、一度起きると過剰なほどに警戒されます。指令が出てしまえば従うほかなく、それに反して誤認事故を引き起こすような事態を招けば、この上ない窮地に陥ることは言うまでもありません。本末転倒の指令を受けた私は、謝罪に尽くす部長さんの姿を思い浮かべながら、少し嫌な気分で巡回を始めました。