カルチャー
ジャーナリスト・中島恵氏寄稿

ディズニー裁判で「私も」の声続々……パワハラ解雇も発覚で「暴走する現場」浮き彫りに

2019/04/20 16:15
中島恵

 現場の同僚から理解が得られず、攻撃される……原告側が抱える問題が浮き彫りとなったが、その一方で、別の動きも出てきている。オリエンタルランド・ユニオンが1月12日、Twitterに「今、OLC裁判をしている原告二人以外で、最近パワハラで解雇され交渉申し入れをしている別件もあります!毎日いろんなキャストの方から『私も同じです!』の声上がってます!お気軽にご相談ください!ひとりじゃない!」(原文ママ)とツイートしたのだ。パワハラ裁判中に、別の非正規従業員がパワハラ解雇に遭うという、想像し難い事態が起こったのだ。そこで筆者は、なのはなユニオンの委員長・鴨桃代氏に取材を申し込んだ。

 4月2日現在、団体交渉を開始しているのは、女性キャストCさん。裁判の報道を見て、ユニオンに助けを求めて駆け込んできたそうだ。Cさんの受けたパワハラとは、一体どのようなものだったのか。

「Cさんは、『協調性がない』『空気を乱す』『通常の指導や説明に対する意見・反論批判が多い』などの理由で2019年1月末をもって解雇されました。Cさんは何度も上司に個室へ呼び出され、『同僚のキャストがCさんについてこう言っている』と指摘され、『それについて反省や改善はないのか』と責められたものの、Cさんにとっては、“意味がわからない抽象的なこと”ばかり。『わかりました』と言えば、自分が非を認めることになってしまうので、Cさんは同意できなかったとのこと。現在、裁判中のBさんは『30歳過ぎのババアはいらない』『ケガで働けないなら辞めちまえ』など明確なパワハラ暴言を受けましたが、Cさんはここまで直接的な暴言を受けてないが、解雇されました」(鴨氏)

 オリエンタルランドには、ゲストや同僚キャストからクレームが入ったりした場合、上司に呼ばれて書かされる「パフォーマンステーマ・スキル指導確認書」という書類があるという。

「上司からの改善を要する事実および指導内容について、『指摘事実及び指導内容を受け止め、改善することを約束します』と本人が署名・押印するものです。そのなかに、『改善が出来なかった場合、時給およびグレードの変更、あるいは契約が終了となる可能性がある』と書かれています。『これは始末書ではない』と、交渉の場で会社の人事部の人は公言しましたが、現場では始末書の性格を持っています。Cさんだけでなく、これまでユニオンに駆け込んできた人たちが言うには、上司に個室に呼ばれて書かされるもので、この書類自体がキャストにとって相当なストレスとなっており、パワハラと感じるようです」(同)

 近年、ディズニーランドでは、ゲストの迷惑行為が問題になるケースも少なくない。鴨氏も「キャストの対応が悪かったのではなく、客側が“モンスター化”して、理不尽なクレームを入れているケースもあり、カスタマーハラスメントも横行していると思う。」と述べる。

「ところが、オリエンタルランドは“ゲスト第一主義”なので、いかなるクレームもキャストが悪いとして、改善されなかったら時給減額か契約終了という書類にサインさせています。ユニオンは、それでは問題が隠され、真の接客改善につながらないと主張しています。キャストがみんな『私が悪い』と思わせてしまうホスピタリティ教育……そんな社風だと感じます」(同)

 Cさんは解雇通告をされたものの、解雇理由は「不明」だという。ユニオン側はその点も疑問視しているそうだ。

「現場の上司であるスーパーバイザーや店長が解雇を言い渡すのですが、第二回目の交渉で、Cさんの解雇理由を会社側に問うたところ、『今は正確に言えないので、次回、回答します』と言われました。解雇を通告したのに、解雇理由を言えないのはおかしいでしょ。人事部は具体的解雇理由を把握していないのではないか、現場が暴走しているのではないかと感じます」(同)

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