カルチャー
がん研究者・大須賀覚氏寄稿

池江璃花子選手、堀ちえみさん……有名人から「がん公表」を受けた我々が“すべきでないこと”

2019/03/21 17:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

 次に、患者さんにどのように接すれば良いのか、どのような声をかけてあげれば良いのかという点について触れます。この点では、個人的にあまり好ましくないと感じる場面に出会うこともあります。

 がん患者さんへの対処というものは、人と人との関係ですので、もちろん100%の人に当てはまる一つの答えがあるわけではありません。そのため、患者さんによっても変わります。それは大前提です。

 ただ、患者さんが不快に思う接し方が、あたかも「良いこと」と誤解されているケースもあり、この点に関しては知っておいてもらった方が良いのかなと思っています。
有名人に限らずですが、家族ではない周囲の人ががん患者さんに対して取る基本的姿勢としては、「距離を保ったまま、とにかく静かに見守ってあげること」「何か困ったことがあったら、いつでも相談に乗ること」だと思います。

 良くないと思うのは、「善意の攻撃」をしてしまうことです。自分が何か行動して、患者さんのためになる何かをしないといけないと思ってしまい、本人や家族に頻回に会いに行ったり、自分が良いのではと思うがん治療に関する情報を、一生懸命に送ったりなどは好ましくありません。自分も不安で何かをしてあげたい、それをぬぐうためにも自分も何か具体的な行動をしてあげたい、その思いは大変にわかります。しかし、患者さんに必要なのは適切な治療をしっかりと進めていくことであり、それを静かに見守ってもらうことです。

 こと有名人の患者さんに対しては、SNSなどを通じて、自分の信じる価値観や治療方法を押し付けようとする人がいますが、これは、むしろ迷惑になってしまうことも多いです。この治療は効果があると根拠のはっきりとしない治療を勧めたりするのも問題になることがあります。がんはとても難しい病気ですので、専門家でない人がネットなどで調べた情報では、正確性が低く、逆に患者さんを混乱させることも、残念ながらあります。

 また、マスコミも誤解をさせていることが時にあると思います。報道では、「みんなで励まそう」とするような傾向がとても強く、本人に積極的に関わるような行動を、素晴らしいというように推奨してしまうものもあり、それも良くないと思います。「静かに見守ってあげる」とことを第一に、患者本人が積極的に関わってくれることを望む時には行うと考えてもらった方が良いのではと思います。

 また、マスコミの行動の中で良くないと思うのは、本人や家族にインタビューをすることです。突然の病気で、本人も家族も混乱していますし、病気治療で本当に大変です。家族自体も第2の患者といわれるように、大変な精神状態にあったりします。家族なら良いわけではなく、そっとしておいてあげるべき対象です。もう少し配慮が必要ではと思います。

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