セレブ家庭で虐待は起こらない? 南青山児相建設計画、元児童福祉司が語る「反対派」の盲点
――大きな質問ですが、虐待のない社会にするためにはどうしたらいいのでしょうか?
金井 臨床をやってきた身としてまず思うのは、虐待の連鎖を断ち切ることです。そのためには、虐待を受けている子どもを早くその環境から救い出し、安定した環境でケアを行い、いつか結婚して子どもを持ったときに、きちんと育てられるようしていかなければなりません。また、子どもが育つ環境として、親が暴力をふるったり罵ったりするシーンを見るのはダメージが大きいので、DVをしている親の治療や教育も大切です。予防として、中学高校くらいの教育の中でも、適切な異性との関わり方などをもっと取り上げて、男女共に学ぶべきではないかと感じています。
――一方で、私たちが日常的にできることはあるでしょうか?
金井 虐待を受けている子どもが出すSOSに気づいてあげることです。そのためにも、「よその家のこと」にせず、気になる親子がいたら声をかけるとか、お節介をしていってほしいと思います。最近はそういった風潮も出てきていますが、もっと必要かなと感じるので。
誰にだって虐待しそうになる瞬間はあるはずなので、それ自体を責める必要はありません。それより、どうやったら解決できるかなど、周りのサポートによるところが大きい問題を、みんなで考えていかなければならないと思います。例えば赤ちゃんが何をしても泣きやまなくて困っているとき、「大人だってなんとなく泣きたくなる時があるし、赤ちゃんも同じだよ」って声をかけてもらえたら、安心するじゃないですか。そういうサポートがなく虐待に至るケースが少なくないので、「頼れる人がいないのかな」「サポートが必要そうだな」と感じたら、積極的に声かけをしていってほしいですね。
(取材・文=千葉こころ)
金井雅子(かない・まさこ)
江戸川大学こどもコミュニケーション学科特任教授。心理職で入都後、主に児童相談所等で児童心理司、児童福祉司として児童福祉の第一線で勤務。