東京ディズニーリゾート、障害者/ケガ人装う迷惑ゲスト……元キャストたちの怒りと本音
昨年末、東京ディズニーリゾート(以下、TDR)で目撃されたという“車椅子ゲストの不正優遇疑惑”がネット上で物議を醸した。なんでも、ある男女2人組が、車椅子に“乗る側”“押す側”を入れ替えながら、パーク内で遊んでいたというのだ。
TDRでは、障害のある人や、ケガなどで一時的に体の機能が低下している人に対するサポートサービスとして、「ゲストアシスタンスカード」を発行している。このカードを持っていると、例えば、アトラクションやグリーティングの列に並ぶことができない場合、列ではなく別の場所で待機できるという対応が取られるほか、耳に障害がある場合、音が聞えやすいスピーカー近くの席に案内してもらえるなどのサポートも受けられるという。全ての人に楽しんでもらいたいというTDRの思いが感じられる制度だが、これを不正に受けるために、障害者、もしくはケガ人などを装う人がいるのではないかと、以前から問題視されていたのだ。
そんな中、TDRは、1月7日からゲストアシスタンスカードのルールを変更するとのことだが、実際に現場で働いているキャストは、今回のような不正優遇疑惑のゲストに、何を思うのか。それぞれ、ディズニーランド、シーのアトラクションで働いていたという元キャスト3人が集い、本音を語り合った。
ディズニーの“良心”を悪用する人たち
Aさん(以下、A) ゲストアシスタンスカードのルールが変更になるそうで、正直、元キャストとしては「ようやくか!」という思いです。これまで、ゲストアシスタンスカードの対象者は「身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の所持している方」もしくは「疾患、負傷などにより体の機能が低下している方(高齢者の方、妊婦の方を含む)」だったけれど、キャストが手帳の確認もしていなかったから、いくらでも嘘をつける状況でしたよね。今後は手帳の有無で、カードが分けられるそうです。
Bさん(以下、B) 7日からは、手帳を持っていて列に並ぶことができない人、手帳を持っていて列に並ぶことができる人、手帳を持っていない人の3つのカードに分かれるので、手帳チェックはマストになります。
Cさん(以下、C) どうして手帳を確認しないんだろうという疑問は、キャスト側にもありましたよね……。それがディズニーの良心だったかもしれませんけど。そもそも、ゲストアシスタンスカードは、「待ち時間ゼロになる魔法のカード」のようなイメージですけど、名目上は、「待ち時間分、別の場所で待機していてください」「その間、ほかの施設は利用できません」というカードなんです。例えば、昼の12時にスプラッシュマウンテンに行って、そのとき60分待ちだとした場合、「60分後に再度来てください」と、カードに記入する……という。でも、待機時間中、ずっとキャストが監視しているわけではないので、例えば待ち時間ゼロのほかのアトラクションに乗ることもできてしまう。
B ネットで「障害者を装って不正優遇されてる」と騒がれていましたけど、TDRは“優遇”しているんじゃなくって、ゲストの方みんなが、同じように楽しんでほしいという思いなんですよ。だから、アトラクションに行っても、待ち時間ゼロですぐ乗れるわけではなく、待ち時間分ほかの場所で待機していてくださいということなんですよね。
A そうなんです。でも、いくら夢の国と言ったって、ゲストの中には、やましいことを考える人も大勢いますよ。そうだ、これまでは、同行者も同じように別の場所で待機というルールでしたけど、今後は、手帳を持っていない人の場合、同行者は列に並ぶことになるそうです。
C 公式サイトに、「列に並ぶことが困難な方ご本人に限り、待ち時間を列以外の場所で待つことが出来ます」と書かれてますよ。これで悪用する人が減れば万々歳という気持ちですが、実際問題、手帳は持っていないけれど、長時間並べない人にとっては、TDRで遊びにくくなってしまいますね。その点は心が痛いです。例えば、車椅子の親と小さい子どもの場合、子ども1人で列に並ばせるわけにはいきませんし……。
B 私がTDRで働く以前の話なんですけど、ゲストアシスタンスカードができた2000年当初は、待つことができないという障害を持つ人は、自己申告制で待ち時間ゼロになるという制度もあったみたいです。でも、悪用する人が増えて廃止されたそうで、そのときも、本当に困っている人にとっては納得いかなかっただろうなと思います。