仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

マツコに「かなわない」といわしめるIKKO、今のバラエティーで重宝がられる“無垢さ”

2018/12/20 21:00
『IKKOの字語りエッセイ—道』(芸術新聞社)

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「ガチムチ~」IKKO
『ダウンタウンDX』(日本テレビ系、12月6日)

 最近テレビで見なくなったなとつくづく思うのが、“豪邸拝見”である。かつてはスターや一般人の豪邸を訪問し、レポーターが家の調度品にいちいち驚いて「これはおいくらでしょうか?」と尋ねるアレが、ワイドショーを中心に結構な頻度で繰り広げられていた。経済的な格差が広がると、豪邸を持つほど成功しているリア充を見たくないというのが、今の視聴者心理なのかもしれない。

 また、お笑い番組では、オトコ芸人がオンナ芸人をブスいじりすることがほとんどなくなっていることにも気づく。オンナ芸人本人が、ブスや非モテを自称することはあるが、オトコ芸人から「おまえはブス」といったふうに投げかけることは、もうほとんどないと言ってもいい。バラエティー番組は女性視聴者からの好感度が大事と聞いたことがあるので、やはり女性に反感を買うことや、SNSの炎上を恐れているのかもしれない。

 成功者のリア充アピールもダメ、ハラスメントとみなされるような特定の誰かを笑うイジリもNG。リア充に甘く、弱いものはイジりという体で叩いてきたバラエティーの手法が、今はもう通じなくなっている。かといって、制作側は新しいバラエティーとは何か、明確な答えを見つけられていないようだ。そんな中、リア充でありながら、うまくいじられることができる人がいる。美容家でタレントのIKKOである。


 カリスマヘアメイクという裏方だったIKKOだが、『おネエ☆MANS』(日本テレビ系)に出演したことで出役に。ヘアメイクとしての確かな腕で世の女性を魅了した。その後のおネエブームは、マツコ・デラックスなどのスターを生み出したが、そのマツコは『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日系)で「笑われることを躊躇しないから」という理由で「IKKOさんにはかなわない」と話していた。

 確かにIKKOは無敵だと思う。まず、つっこみやすい。視聴者がリア充を嫌う今、芸能人たちは、女優やモデルといったきれいどころも「本当はオタクなんです」「いつもぼっちです」といった具合に非リア充的なコメントをする。しかし、IKKOはかつて『さんまのホントの恋のかま騒ぎ』(TBS系)で「目標とする女性は、グレース・ケリー」と発言したり、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』(日本テレビ系)で、「元旦に抱かれたいオトコが思い浮かばなかったら、オンナとしておしまい」といった具合にお高い発言が多いので、芸人は「何言うてんねん」とつっこみやすいのだ。

 『人生最高レストラン』(TBS系)で、IKKOは「いまだにオチも何にもわからない」と発言していたが、確かにわかっていなさそうだ。変なところで声を張ったり、立ち上がったりする。質問に答えず、聞かれていない話をだらだらして『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』でダウンタウン・松本人志に「おまえは、妖怪尺食いか」と言われていたことがあるが、こういう誰が見てもわかる隙があるために、芸人が突っ込んでもいじめのような印象を与えないだろう。

IKKO 心の格言200