セックスは「拒否する方」が悪者なのか? 夫婦間のセックスレス問題、弁護士の見解は
今年7月、かつて『あいのり』(フジテレビ系)に出演した経歴を持つ人気ブロガー・桃が、8年間連れ添った夫との離婚を発表。その原因を「セックスレス」と明かしたことで、世間から注目を集めた。昨年、一般社団法人日本家族計画協会が発表したデータによると、約半数の夫婦がセックスレスというが、夫婦が互いに納得し、その上で婚姻関係を続けるケースがある一方、桃のように、夫婦ともに不満を抱き、離婚するケースも存在するようだ。
そんな中、気になるのは、一方が「セックスレスでも婚姻関係を続けたい」と望み、もう一方が「セックスレスだから離婚したい」と考える場合である。セックスをめぐる意見の食い違いは、泥沼離婚劇に発展しそうな気配も漂わせるが、セックスレスは実際、「法的な離婚理由に該当することがある」と、弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士はいう。
「何となくしたくない」はダメなのか?
民法770条1項には「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。」とあり、「1 配偶者に不貞な行為があったとき」「2 配偶者から悪意で遺棄されたとき」「3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」「4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」そして「5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と定めている。セックスレスは、この第5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる場合があるというのだ。
ただし、「単に、応じない、というだけではなく、それが長年にわたった結果、相手が『この人とは婚姻関係を続けられない』と思うに至って、初めて離婚原因になり得ます」とのこと。なお、過去には「ポルノ雑誌に夢中になり、妻とセックスしない」という事例が「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるとし、離婚が認められたことがあったという。
前提として「病気」や「老齢」によってセックスレスになった場合は、それだけで離婚理由にはならないというが、「夫(妻)とは、何となくしたくない」といった生理的・精神的な理由で、相手の要求を拒否し続けると、離婚理由につながるケースもあるわけだ。
しかし、その「夫(妻)とは、何となくしたくない」の背景には、性嫌悪障害や性欲減退障害といった性障害が関係することも。そういった目に見えにくい原因があっても、法的には、セックスに応じない側が「悪い」と見られてしまうのだろうか。
「例えば、そうした性障害を『治療する』という行動があれば、離婚原因になりにくくなります。しかし、障害を認識した上で治療を拒絶する態度を取り、長年性交渉に応じず、それを相手が不服とすれば、やはり離婚理由になり得ます」
自身が性障害だとわかっていない人も少なくないだろうが、それでも現実問題、夫婦間ではセックスを拒否する方が離婚を突きつけられる側となり、さらに場合によっては慰謝料を支払うことになるのだ。