夜の仕事をするシングルマザーと虐待の関係——“事件予備軍”が生まれる背景
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第20回 渡辺しずかさん(仮名・24歳)の話(後編)
前編でインタビューした渡辺しずかさんの紹介者(30代・男性)に、横浜の風俗事情について聞いた。
■虐待やネグレクトしてる親に限って、警戒感が強い
――今回、渡辺しずかさん以外のシングルマザーの方はみなさん取材NGだったんですよね。
そうですね。とにかく警戒されました。お店に顔を出すたびに取材の話をしたんですが、全滅ですね。ネグレクトとか虐待をしてそうな子に限って、すごく警戒心が強くて。普段、話をしてる子とかも、取材の話を切り出した時点で「いや、私無理なんで」って感じでした。――キャバクラで働いてる女の子って、どんな子たちなんですか?
30代の子は少なくて、20代半ばよりは下の子が多いです。中には10代後半の子もいます。子持ちの子も、珍しくないですよ。結婚してなくて、シングルで育ててる子が多いかな。
――女の子たちはなぜシンママになるんですか?
従業員の女の子から直接聞いたり、女の子の派遣先の店で聞いたりした話ですが、お客さんと行きずりで行為に及んで、妊娠・出産するケースがあるんです。そうした場合、子どもへの愛着はあっても、実の父親が誰かわからなかったり、育てる自信が持てなかったりします。
――シンママになる女の子に傾向はあるんでしょうか?
年齢が下がれば下がるほど、ひどい親が増えるってのがありますね。家族計画とかもちろんない。言ってみれば若さの暴走。子どもを作ったこともそうだし、夫婦けんかの延長で DVを受けて、子どもと一緒に逃げたりとか、育てていても虐待したりとか。世間で言われてる通り、やはり再婚後の虐待が多いかな。2010年の大阪の虐待事件のような、どうしようもない親も中にはいますよ。そういう虐待とかネグレクトとかをしてそうな子に限って、警戒感が強かった。
――紹介して下さった渡辺さんの話と大分違いますね。
比べるまでもないですが、渡辺さんはずいぶんしっかりしているほうです。
――事前に聞いていたプロフィールと異なり、渡辺さんは結婚はしていなかったし、母親は離婚じゃなくて病死でした。
そうだったの? あれ、話と違うなあ。
――話を戻します。虐待とかネグレクトしそうな子どんな母親ですか?
気が強くて、人に相談しない子が多い。そういう子は、全部自分で決めちゃうんですよ。離婚とかも、すぐにパンと決めてしまって。今後どうしていくとか、将来のための羅針盤など何も持たず、計画とかは何もないままで離婚して、シングルマザーという穴に簡単に飛び込んでしまうんです。すると不幸が連鎖するというか、負のスパイラルに入り込んじゃうんですよね。再婚せず、誰にも相談しない結果、子どもを家に置き去りにしたり、再婚したらしたで、子どもが継父から虐待されたりとか。
――ネグレクトはなぜ起こるんでしょう。典型的なパターンはあったりするんですか?
仕事が終わった後、女の子同士で飲みに行くことがあるんです。そのとき誘われて断れず、ついて行く。そうしたことが重なって、結果的にネグレクトの状態になるというケースは実際にありますね。それで私が心配して「早く子どものところに帰ってあげたら」って言ったら、説教に聞こえるみたいで、嫌がられます。
――寮生活している子たちはどうでしょう?
両親が離婚してしまっている子が大半。親が自分で面倒を見きれないということで、キャバクラやホスト、風俗嬢の子らのためのマンションというか寮に入れちゃうんですよ。子どもに「すぐに入りなさい」とか言って入れちゃって、それを子離れと錯覚しちゃう。そんなケースが、ちょっと多い気がしました。
――とすると、まだ10代とかですよね。それは一種の養育の放棄ですね。
そう言えますね。
――もともとそういう子って、非行に走ってた子が多そうですね。
その通りです。家出したり、覚醒剤をやったりタトゥー入れたりしている子も多いです。結婚してる子は、ほとんどいないです。シングルマザー、水商売の方、不良外国人。そんな人たちが多いですね。