「恥ずかしくないの?」中学受験で“子どもに言ってはいけない言葉”を浴びせた母の猛省
幸子さんは、成績が伸びない洋貴くんを叱ったのではなく、自分の不安を洋貴くんにぶつけていただけなのだろう。筆者はアドバイスとして「塾に駆け込め!」とだけ伝えた。その足で幸子さんは塾に行くのであるが、室長は幸子さんに力強く、こう言ったという。
「男は泣いて、またいっそう、強くなるんですよ。洋貴は這い上がってくるから、心配ないです。お母さんは笑顔の方が良いに決まっていますが、そうもいかないのが中学受験です。それもこれも込みなのが、中学受験。困ったときには、我々に任せてください」
そこで、幸子さんは塾の先生方にお任せして、もう何も言わずに、息子を見守ろうと誓ったという。
「洋貴をこんなにも追い詰めたのは私です。やめるのも、続けるのも洋貴の自由。私はどちらの選択であっても洋貴の応援団であり続けようと思います」
その半年後、最難関中学の入学式には、晴れやかな笑顔の洋貴君と幸子さんがいた。
後日、筆者が洋貴君に「あの時の母の暴言をどう思ったか?」を聞いてみたところ、「う~ん? そんなことがあったかな? 母は口数が多い方なので、僕はあんまり聞いていなくて(笑)。でも、母がこの世の中で誰よりも僕の事を心配してくれているってことだけは、わかっているんで」と返って来たので笑って、そして、ちょっと泣けてきた。
言わなくてもよい暴言を言ってしまうのが親。親なればこそということもある。でも、子どもはそれをも超えていってくれる。
筆者はこう思っている。中学受験に親の暴言は付き物だ。良い悪いでいえば、悪い。しかし、親も修業の最中。時には自分の暴走を内省し、まずいと思ったら、改める。そして、煮詰まったら、第三者に助けを求める。少し、冷静になれるから。子どもに暴言を言ってしまうのは、疲れている印。その時は迷わず、一息付く。そうやって、親子で手探り、行きつ、戻りつして進むのが中学受験なのだ。
(鳥居りんこ)