尼神インター・誠子、「結婚よりお笑い」「オンナとして不幸」発言に見る“芸人としての力量”
それでは、なぜ誠子は起きてもいないことで悩むのだろうか。オンナ芸人も結婚して出産する人が増えている中、名前の知れたオンナ芸人が「結婚するから芸人を辞めます」と選択することは、ほぼないだろう。男性の立場から考えてみても、売れているオンナ芸人はそれだけ収入も高いわけだから、自分が左うちわで暮らせるというメリットがある。オンナ芸人が仕事を辞めない方が、男性側も助かるわけだ。
実際に起きてもいない、また身近な事例で考えてみてもほとんどないケースで誠子が悩むのは、未来が明るいと信じているからではないだろうか。
生死に関わること、また金銭問題などの苦労から悩みが生まれることもあるが、誠子の悩みはその手の深刻さはない。結婚するからお笑いを辞めろと迫られることは、大前提として売れ続けていることが条件で(仕事が月に1~2度しかなければ、辞めるという話にはならないだろう)、かつ恋愛では相手に強く求められていると見ることもできるから、甘美な響きがないこともない。つまり、自分の仕事は好調で結婚したいと思える相手に出会えると信じているからこそ、この悩みが生まれるわけだ。
かつて、オンナ芸人は、自分のブスさを自虐してネタにしていたが、今は「ブスなのにいい女気取り」を笑う方向にシフトしつつある。しかし、このキャラは“ブス”と“いい女”を天秤にかけた時、ちょうど釣り合っている状態を保たないと、芸人として成立しないだけでなく、人から「本当に自分のこと、いい女だと思っている」と思われ、叩かれる可能性も秘めている。同番組で、さんまは「お笑いはほかの人より下と思われることで、笑ってもらえる」と話していたが、誠子が「本当にいい女」になってしまうと、笑えないのだ。
ネタを見せる番組が少ない今、芸人の人気は好感度に支えられている。匙加減を間違うと、一気にバッシングの対象になる、なんてことがないとは限らない。今の芸人に一番大事なんは、誤解を招かないという意味の守備力なのかもしれない。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」
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