カルチャー
インタビュー

「セックスしない夫婦は今後も増え続ける」精神科医・阿部輝夫氏が語る日本の“セックスレス問題”

2018/11/29 19:30

――女性が男性と同じような性嫌悪症になるケースも増えているのでしょうか?

阿部 そもそも女性の性嫌悪症は、「誰とでも嫌」という「全般型」が多いです。夫にのみという「状況型」でいうと、男性同様、「夫に愛情はあるものの、父親のように見えて性嫌悪症になる」といったパターンもありますが、夫の浮気や乱暴なセックス、あとは度重なる夫の勃起障害により、こちら側がその気になっているのにうまくいかないことが繰り返されたなど、不安や外傷体験から性嫌悪症になるケースの方が圧倒的に多いです。そのため、夫とはできないけれど、不倫相手とならできるという女性も少なくないですよ。

――ほかに女性の性障害で、近年見られる傾向はありますか?

阿部 性欲低下症で受診する女性は増えていますね。夫側が困って妻を連れてくるケースと、妻自身が「なんか不自然」「このまま歳をとっていくわけにはいかない」などと感じて自発的に来られるケースの両方があります。患者数が増えた背景には、女性の性が開けてきたことも関係しているのかもしれませんね。ただ最近では、30代などの若い女性も多いことから、仕事が忙しく、疲れやストレスが溜まり、性欲を司る男性ホルモンが低下して、欲求が湧かなくなっているということもあり得ると思います。

――女性側が原因のセックスレスでは、性欲低下症が一番多いですか?

阿部 いえ、私のクリニックで最も多いのは、「性器骨盤痛・挿入障害」です。幼少期の教育などから、セックスすると女性器が「破ける」「大量出血する」などのイメージを持ってしまい、恐怖心から、触れられるだけでも痛みを感じるケース。もしくは、ある時の経験をきっかけに痛みを感じるようになるケース。前者が「生来型」で後者が「獲得型」です。どちらも治療で100%治せるのですが、生来型の方はなかなか手ごわいですね。とある産婦人科医の話ですが、娘さんが生来型の性器骨盤痛・挿入障害で、結婚後もセックスができなかったため、下半身の痛みを感じなくする腰椎麻酔をしたのですが、娘さんは「痛い」と言ったんだそうです。実際には感じない痛みを、脳が感じてしまったんですね。

 なお性器骨盤痛・挿入障害の治療は、宿題を出しながらのカウンセリングが中心となります。宿題は、自分の性器を手鏡などで見て構造を理解してもらう「自己身体観察」から始め、コンドームを被せた綿棒2本など、細い物から挿入練習をしていき、最終段階では、挿入せずに性器同士の触れ合いを意識する「ノン・エレクト法」から、性行為へとつなげていきます。

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