緊急寄稿

ディズニーランド「パワハラ」「過重労働」裁判に見る、オリエンタルランドの「4つの地雷」

2018/11/15 12:00

3.働き方改革の動きに“逆行”

 政府と社会が“働き方改革”を進めている中、原告の訴えを見るに、オリエンタルランドが時代を逆行している感は否めない。B氏は、午後10時30分に仕事終了、午後11時20分の最終電車で家路につき、翌日は午前6時45分出勤といった厳しいシフトを強いられていたこともあったそうだ。

戦後の焼け野原から日本経済が復興したのは、定時にとらわれず猛烈に働く国民性によるだろう。バブル期には「24時間働けますか」というリゲインのCMがヒットし、長時間の激務をこなす人が美徳とされた。しかしそれは、頑張れば頑張っただけ給料が増えた時代の話である。バブル崩壊後の日本経済は縮小均衡に入ったため、頑張れば頑張っただけ……ということはないのだ。

 日本政府は、働き方改革で「非正規雇用の処遇改善」を掲げている。A氏もB氏も非正規雇用だが、請求棄却を求めるオリエンタルランドは、彼女たちの処遇を改善する気はないようである。

4.出演者のキャリア形成を考えていない?

 原告のA氏とB氏の訴えからは、オリエンタルランドが、従業員のキャリア形成を考えていないのではないかといった疑念も生じた。実際にA氏は、会社から「使い捨て」されているように感じると証言した。

 A氏とB氏のような出演者は、難関オーディションを突破した人だけがなれる職種で、2人とも長くダンスレッスンに通ってやっと合格している。レッスンの費用はもちろん自分持ち。おそらく出演者たちは、「これを一生の仕事にしたい」と思っている人が多いだろう(現在東京ディズニーランドは35周年、実際に、開業時に出演者として採用された勤続35年の50代従業員もいる。まさに一生の仕事である)。


しかし、胸郭出口症候群を発症したA氏に、当初「休業補償はない」などと説明した点を見るに、出演者が長く働き続ける環境を整えようとする配慮は会社側にない。学生のアルバイトとの処遇差はほぼないのではないか。

 A氏もB氏も、このままずっとディズニーで出演者として働くことを希望している(現在2人とも休職中)。一生の仕事としてディズニーで働くことを希望する人たちのキャリア形成を、会社はどう考えているのだろうか。

ディズニーの労働問題 「夢と魔法の王国」の光と影