アラフォー風俗嬢が、ラブホテルで中島みゆきの「ファイト！」で思わず泣いた夜

――デリヘルで風俗デビューし、出稼ぎ＆吉原ソープを掛け持ちした後、現在は素人童貞などSEXに自信のない悩める男性のためにプライベートレッスンを行うアラフォー風俗嬢が、男たちの姿をつづります。

　デリヘル嬢時代に出稼ぎ先で出会った、30代半ばのごく普通のサラリーマン男性。オーダー内容は、車待ち合わせで、即尺にノーブラ希望とのこと。即尺とは、プレイ開始ですぐフェラすることを言う。

　田舎は車社会なので、都会のように駅前などで待ち合わせてから一緒にラブホテルに入ることはあまりなく、待ち合わせ場所に車で現れたお客さんの助手席に乗って、そのままホテルに行くことが少なくない。見知らぬ男性の車に乗ることほど、恐怖で慣れないものはないが、男性にはそんな女性の気持ち、きっと知る由もない。

　そして待ち合わせ場所に着き、助手席に乗り込む私。ホテルまで10分以内で到着するか聞くと、返ってきたのはあいまいな言葉で、そもそも決まっていない様子だった。某ホテルの割引券を持っていると告げると、「じゃあそこに行こうか」となったが、行先も決めずに車を走らせていたのか？　と嫌な予感がした。

　しばらく車を走らせていると突然、「……ねぇねぇ、洋服脱いでおっぱい見せてよ」。何言ってんの？　それって、シートベルト外せってこと？　と抵抗すると、「いいじゃん、ちょっと見せてよ」。「真っ昼間で明るい上に、スモークガラスでもない車の助手席で、おっぱい出せって、対向車に丸見えですよね？」と返しても、「（プレイ開始の）タイマー回してくれていいからさー」と譲らない。「私、まだ捕まりたくない～」と苦笑いすると、しばらく沈黙した後、「やっぱいいや。キャンセル料金払うから、そこの電気屋で降りてくれる？」ときた。

　お店に電話し、4000円のキャンセル料金をいただいて、降りた。怒りと恐怖で体が震えた。お金を払う前から「おっぱい出せ」なんて、走行中の車の中でシートベルトを外さないとできないようなことを強要するなんて。それに、脇見運転する気満々だ。非常識極まりない。車内であっても対向車から見えたら、それに、もし子どもが乗っている車とすれ違ったら？ このサラリーマンだってワンボックスカーだったから、もしかしたら子持ちの既婚者かもしれない。

　ホテルも決めずに走行していたこと自体、始めからタダでおっぱい見せてもらって即尺も車内でさせて、その辺でぽいっと降ろして、キャンセルしようとしていたのではないか？ほかの風俗嬢は言われたらやっているのだろうか？　といろいろ考え込んでしまったが、店長へ正直に伝えたところ、私の対応で問題ないと言ってくれた。出稼ぎ嬢だと、お客さんからクレームをもらったりキャンセルされたりすると、店側からの評価が下がるため、契約が切られたりクビになることもある。私のような太ったおばさんは、ほかに働けるお店もなかなか見つからないので、それも心配だった。

　それにしても、しばらくはイライラが止まらず、もしかしたら常習犯で、あちこちのデリヘルでやらかしているんじゃないかと思い、迷いに迷ったけれど、写メ日記（風俗嬢の営業用ブログ）で忠告メッセージを書いた。もしかしたらお客さんたちがドン引きして、来なくなっちゃうかな……って、ちょっと不安にもなった。でもお金を払う前で、プレイも開始していないのに要求してくる良識のない風俗客を野放しにしたくなかったし、ほかの嬢さまたちにも警告したかった。

　ところが、数日後。180分コースで指名して来た、初めましてのおじさん。私のその忠告文を読んで、勇気ある言動に感動したから、ロングで指名してみたと、飲み物や食事、ミュージックDVDを用意してくれていた。あの忠告日記がなかったら、呼んでいなかったとまで言い切っていた。

　賛否両論分かれるであろうと覚悟していたけれど、店長からもネットでも特に叩かれたり、怒られたりはしなかった。そしておじさんは、たくさん話を聞いてくれた。嫌な思いをした後の、こういう優しさ。風俗客でも性欲で脳が侵されてない、わかってくれる人もいるのだと。こうして何かを感じてくださった人が、1人でもいてくれただけで、勇気を出し書いてよかったと思えた。そしておじさんが用意してきた、大ファンだと言う中島みゆきのミュージックDVDから、「ファイト！」が流れてきて、ラブホで思わず泣いてしまった。

＊曼荼羅＊（まんだら）
デリヘルで風俗デビューし、出稼ぎ＆吉原ソープを掛け持ちした後、現在は素人童貞などSEXに自信のない悩める男性のためにプライベートレッスンをしているアラフォー風俗嬢。子宮筋腫と腎臓の手術経験があり、現在は子宮頸がん中等度異形成持ち。売りはHカップのおっぱい。
ブログ「続・おちぶれ続けるアラフォーでぶ女の赤字返済計画」
悩める男性のためのSEXレッスン「プライベートレッスン」