「就活メイク講座」はなぜ気持ち悪いのか? 日本の“就活マナー”が失ったもの
「自由な髪型で内定式に出席したら、内定取り消しになりますか?」「ひっつめ髪をほどいた就職活動が、この国の当たり前になりますように」――9月下旬、P&Gのヘアケアブランド「パンテーン」が、日本の就職活動生に向けた広告を展開している。同社は、全国の就活経験者の男女1,000人に「就職活動に関する調査」を実施。就活生の81%が「企業にあわせて自分を偽ったことがある」と回答したことを受け、「現代の就活生が、ありのままの姿で、自分らしく就職活動ができること」を願い、この広告を展開したという。
確かに近年、就活生の服装やヘアメイクは画一化されていると言えるだろう。インターネットで「就活 服装」「就活 メイク」「就活 ヘアスタイル」などと検索すると、「好印象を与える就活の服装」「清潔感と信頼感が命の就活ナチュラルメイク」「就活生向けの前髪の作り方」などのハウツーがわんさかヒットする状況で、これらを参考にする就活生の見た目が、どこか似通るのは当然なのかもしれない。
しかし、こうした就活の一面に疑問を抱いていた人は少なくなかったようで、パンテーン広告には、「みんな同じリクスー、髪形、メイクっていう方が気持ち悪い」「日本の就活に一石を投じた」「就活スタイルがもっと自由になるといいな」といった好意的な意見が飛び交うことに。また、自身の就活時を振り返り、「リクルートスーツを嫌々着てた」「髪もメイクも変えなくちゃいけなくて面倒くさかった」「こういうルールは早くなくなってほしい」などと不満を吐露する者も多かったが、これは見方を変えると、問題意識を持っているにもかかわらず、内定を得るためには、就活ルールに則らざるを得ない現状が、今の就活生にはあるということなのではないか。
今回、日本の就活に嫌気が差し、大学卒業後にドイツへ移住したという、フリーライターで『日本人とドイツ人―比べてみたらどっちもどっち―』(新潮社)の著者・雨宮紫苑氏に取材を行い、日本の就活への違和感とともに、就活生の意識、そして企業側に期待することを語ってもらった。