カルチャー
日本性科学会理事長・大川玲子先生インタビュー

セックス・セラピーは、なぜ必要? 日本性科学会が訴える「健康としての性」とは

2018/10/04 15:00

――女性がもっと「性」を楽しむためには、どうしたらいいでしょうか?

大川 正しい情報と学習(経験といってもよい)が基本です。まず、体の仕組みを知ってください。たとえばオーガズムは、最初に性的な興奮で腟の周りの筋肉(骨盤底筋)がピーンと張りますが、それがピークに達して我慢できない状態から、もとに戻るリズミカルな収縮運動です。オーガズムは誰だって一度経験すればできるようになるので、練習次第です。しかし、うまくいかないと、出そこなったくしゃみみたいに気持ちよくないこともあります。参考になる本もありますから、読むことをお勧めします。

――実際のカップルは、どうすべきでしょうか?

大川 男性は、マスターベーションで子どもの頃から繰り返しトレーニングを積んでいるので、自分の性反応を知り、コントールすることもできます。女性もぜひマスターベーションで、オーガズムを体験してください。そして、お互いにどうしたら気持いいのか伝え合うことが大事です。また、2人で本を読むのもいいですね。

――そういった指導は、産婦人科に行けば受けられるのでしょうか?

大川 一般の産婦人科では、なかなか難しいです。「セックスができない」「感じない」と産婦人科に相談に行っても、「あなたの体は普通よ。頑張ればできる」みたいに適当に言われてしまう場合がある。私たちは医療従事者中心にセックス・セラピストやセックス・カウンセラーの養成をしていますが、ニーズに対して圧倒的に不足しています。性機能不全は病気の一種ですが、保険診療の対象として認められていないことも、治療者が増えない原因のひとつでしょう。

――今後、医療機関で「性」の問題は、どのように扱われると思われますか?

大川 たとえば子宮がんになっても、治療後のセックスに関しては、あまり説明されなかったりするのが現状です。聞かれてもきちんと答えられる人が少ないと思いますが、産婦人科、泌尿器科、乳腺科など、分野によっては医師より看護師に尋ねるほうがいいかもしれません。少なくとも質問することによって、患者さんのニーズがわかり、今後の研究や医療の発展の役に立つでしょう。

 病気のためではない、セックスそのものの不全を治療するセラピストは、そう簡単には増えないでしょうが、現在のところ、病気のあるなしにかかわらず、性機能不全でどこに相談したらいいかわからない場合は、日本性科学会に問い合わせてみてください。 お近くで診療するセラピストをご紹介できるかもしれません。セックス・セラピストが増えて、適切な診療が受けられるように、皆さんからも声を上げ、医学界に要求していただきたいと思います。
(弥栄 遖子)

日本性科学会

最終更新:2018/10/04 15:00
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