カルチャー
小川榮太郎論文で炎上

「新潮45」大炎上! 新潮社社長“声明文”のおかしな点を、言葉のプロ・校正者が徹底解読

2018/09/22 21:44

 A氏は、校正・校閲をする際、「書き手の言い回しについて『なぜこの表現を選んだのか』を時間の許す限りとことん考え抜きます」とした上で、佐藤社長の声明文には2つの問題点があると指摘する。

「まず、この短文自体、文芸批評的な文体になっており、ストレートに伝わらない、もしくは伝えようとしていないと感じます。問題点としては、1つ目が、謝罪がない点。佐藤社長の言う、偏見と認識不足によって、結果、対象となる側に無慈悲な攻撃を加えた形ですから、当然、謝罪はすべきでしょう。特に『#MeToo』運動以後の欧米基準からすれば、実に恥ずかしい態度といえます。もう1つは、今回の論文について、『その主旨に誤りはなく、言葉選びを間違えてしまった』『それを見逃してしまったのが問題だった』と暗に伝えている点です」

 A氏は具体的にどの表現から、そうした書き手の意図を感じたのだろうか。

「ポイントとなるのは、『差別的な表現には十分に配慮する所存です。』の『には』です。『に』が付く部分を強める意の『は』があることで、あくまでも気を配るのは表現の仕方であり、その当事者の心情は本誌のスタンスとして最優先ではないと読むことができます。校閲の立場で手を加えるとすれば、『表現に十分配慮するとともに、』とし、続く一文で、社としての今後の確固たる姿勢を読み手に示すようにと指定を入れます。明確な決意表明が必要ということです。それを今回、あえてしなかったのであれば、小川氏の論文が社会問題化したことについて、社会的責任までは認めていないことにもなり得ます」

 確かにネット上では、声明文に対して、「何を言いたいのかわからない」との指摘が散見されたが、その理由は、社長が「社としての姿勢」について明言を避けていたからなのかもしれない。さらにA氏は、声明文全体から「『内容』ではなく『表現』が差別的だったにすぎない……と言っているように感じた」そうだ。

「もっと言うと、佐藤社長は、杉田議員の論文、そして小川氏の論文について、『言論の自由、意見の多様性の範囲内における“差別的ではない内容”』と認識している可能性もあるのではないでしょうか。佐藤社長の本心は、本人のみぞ知るところですが、例えば『論文を“差別的”と受け取ったのは、読解力が足りないからだ』と言われているように感じる人もいるかもしれませんね」

 佐藤社長としては、明確な言葉こそないものの、“謝罪”の意味合いを含んで声明文を出したのかもしれないが、「この内容では、『読解力のない読者が出てくることをまったく想定できず、配慮できなかった、われわれの至らなさ』について謝罪しているようなものです」とA氏。確かにこれでは、炎上を鎮火するどころか、さらに大きくしてしまうほかなさそうだ。

 

 「新潮45」の大炎上は、新潮社本体の姿勢が変わるきっかけとなるのか。今後も注視していきたい。

最終更新:2018/09/22 21:44
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