東京五輪ボランティア経験は「ブラック企業のいいカモ」に? 「就活に有利」のウソに迫る
東京五輪ボランティアに関しては上述した通りです。その他のボランティア活動の経験エピソードが採用選考ではねられないようにするためには、「苦難・解決・成長」パターンではなく、まったく別の切り口、オリジナリティが必要です。その自信がなければ自己PRのメインに据えないのが賢明です。
空前の売り手市場、そして少子化のなか、優秀な学生を採用したい企業はみな頭を悩ませています。就職氷河期では学生のマイナス面を探し出して不採用にした企業も、いまはプラスの部分を見つけて採用しようとしています。ただしSNSで情報が共有されていることの弊害をどの採用担当者もそろって口にします。自己アピール、志望動機が全て同じに見えると。そのような学生でもいいと考えるのは、すぐに辞めることを前提にしているブラック企業くらいです。
つながりを求め、あるいは承認欲求のために、もはや無くてはならないSNS。災害時のライフラインになるという側面はありますが、手にする情報が均一化する欠点も指摘されています。自分のなかに確たるフィルターを設け、情報の取捨選択を常に行い、同じ情報を目にしても、カスタマイズして自分の言葉で口にすることができる。企業が求めるのは、そのようなタイプの人材です。
大学生の東京五輪ボランティアに思うこと
ボランティア活動が授業の単位になる大学があります。しかしその実情は……。
NHKが東京五輪のボランティア活動について都内の国公私立138の大学にアンケートを取り、86%に当たる119校から回答を得ました。結果は「学生の自主性に任せる」が50校、「積極的に参加してほしい」は48校で均衡しています。しかし参加してほしいと答えた大学のなかにはスペックの低い学校が多いのが実情です。
五輪ボランティアを授業の単位とする大学もありますが、少子化に拍車がかかるなか、お金を払えば誰でも入学できるというマイナス評価が下されているところがほとんどです。存続が危うい大学が、生き残りを賭け「当校の学生のなんと○パーセントが東京五輪をボランティアとして支えました!」と謳い、入学希望者を集めようと考えているからです。逆に偏差値の高い大学の学生は、自分の頭を使って考え、国や東京都に踊らされるようなボランティア参加を疑問視しています。企業がどちらの学生に来てほしいのか、考えるまでもありません。