アジアン・隅田美保、テレビ復帰――「女芸人のブスいじり」は絶対的な悪なのか?
お笑い界では、ブスそのものではなく、“キャラとしてのブス”をイジる流れになり、男性優位の構図にも変化の兆しが見えるという瀬沼氏。しかし、ネット上では、隅田の休業を機に、ブスいじりの是非が議論されたのも事実だ。
「正直、芸人自体はそれほど気にしていない人の方が多いのではないか、ネットが騒ぎすぎているのでは……と思うところはあります。お笑いにはフリとオチがあるのに、オチだけ拾われて批判されているなと。今のようなネット社会では、文脈を見ず、見出しだけで物事を判断してしまいがちなので、もう少しゆっくり判断してもいいのではないでしょうか。しかし、ポリティカル・コレクトネスの観点から、ブスいじりに批判が出るのはよくわかるんです。確かに世界的に見ると、容姿いじりは珍しいことなんです。あと、バラエティ番組で女芸人が“キャラとしてのブス”を見せていたとしても、『視聴者がマネする』点を懸念する声も上がっています。日常生活のコミュニケーションの中で、ブスいじりを積極的に、もしくは無意識にマネしてしまう人もいるでしょうし、例えば、子どもが学校でブスいじりをして、いじめ問題に発展する可能性も否定できません」
隅田はかつてブログで、「世間では私がブスと言われるのが辛くて仕事を休んでる!って勝手に思われてる」「ブスといじられることで、恋愛や結婚のチャンスをずっと逃してきたので、理想の結婚をするためには一回ブスのキャラが邪魔だと言ってるだけです」と語っている。これはつまり、ブスキャラ自体ではなく、それによって、世間に「ブス」として下に見られることが嫌だったということなのではないか。
そうなると、“キャラとしてのブス”は、世間に悪影響を与えかねない笑いの取り方だが、瀬沼氏はここで、ポジティブな影響を与える可能性も示唆する。
「友達同士で“変顔”を見せ合い、そこにブスさ加減を見つけて笑い合ったり、SNSにアップする文化というのがありますが、関係性と親しさによっては、ブスいじりもコミュニケーションの1つになると思うんです。あと、これまで女性には、『綺麗、かわいいこそが素晴らしい』という価値観があったものの、今の時代は“ちょいブス要素”をうまく出し、いじられた方が、コミュニケーションを円滑にして、好感を持たれやすいとも感じますね。それに若い子たちは、ファッションやメイクが個性的すぎることを避けがちで、ある一定の枠内で、他者との差異をどう出すかを重要視する傾向がある。そんな中、“ちょいブス要素”はその差異となり、個性の1つにもなり得るのではないでしょうか」
変顔が“永続的”ではなく“瞬間的”なもののように、女芸人が見せる“キャラとしてのブス”も“その場”だけのものと捉えられるかもしれない。瀬沼氏は「女芸人も、テレビに出ているときだけのビジネスブスキャラとして割り切っている。それに気づいている視聴者も多い」と感じているようだ。