セクシュアル・マイノリティをめぐる社会は50年でどう変わったか?【カルーセル麻紀×ディヴィーナ・ヴァレリア対談】
1960年代の軍事政権下のブラジルを舞台に、現在より自由が制約された中でも、ステージで自分を貫くセクシュアル・マイノリティを描いたドキュメンタリー映画『ディヴァイン・ディーバ』が公開された。これを機に、出演者である伝説のドラァグクイーン、ディヴィーナ・ヴァレリアさんが来日。47年前に交流があったカルーセル麻紀さんとともに、この半世紀でトランスジェンダーやセクシュアル・マイノリティをめぐる社会はどう変わったか、話を聞いた。
■男のパスポートで行っても問題ないフランス
——まず、お2人が知り合ったきっかけを教えてください。
ディヴィーナ・ヴァレリア(以下、ヴァレリア) 1971年に私がツアーのために初来日した時、知り合いました。当時はお会いする前から、カルーセルさんのお名前を知っていました。今回、久しぶりに再会できてうれしく思っています。日本とブラジルのパイオニアとして道を開いてきた者同士、夢をかなようと頑張ってきましたし、実際にかなえてきました。同じような歩みを経てきて、考え方も非常に似ていると思います。お互い幸せをかなえられた歩みを確認できました。
カルーセル麻紀(以下、カルーセル) 50年近く前、お会いしたけど、詳しくは話したことなかったの。今回いろんなことを話して本当に同じ考え方でびっくり! 私はフランス、パリが好きなんです。差別がなかったから。男のパスポートで行っても問題なかった。アメリカでは、そうはいかないんです。
ヴァレリア 私もフランスが好きなのは、まさにそういうところなんです!
カルーセル 私は45年くらい、夏のヴァカンスはずっとパリしか行かないんですよ。
ヴァレリア 自分も若い頃パリに行きましたが、パスポートは男性の名前でした。幸い恋人が大金持ちで一流のホテルに泊まったのですが、なんの問題もなく「マダム」と呼ばれて過ごせました。日本でもそういう問題はあるのですか?
カルーセル 昔は、「奥さん、旦那さんのパスポートと間違えてますよ」って言われました(笑)。
ヴァレリア ウルグアイの友人が80歳を過ぎて、年金を受け取るために役所に行ったけれど、見た目は女性にしか見えないのにパスポートが男性の名前だから、やっぱり「これは旦那さんのパスポートです」って言われたそうです。生まれてしばらくたってから、名前を本人に選ばせるといいのにね。親が選ぶ名前って、だいたい変だったりしますし。
カルーセル 私も戦時中で、敵を徹底的にやっつける「徹男」って名前だからね(笑)。パリのホテルで「マダムテツオ」って呼ばれたわ。
ヴァレリア どっちにも使える名前だといいのにね。