サイゾーウーマンカルチャーブックレビューLGBTを知ると世の中が変わる!? カルチャー 『ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか? 聞きたい!けど聞けない!LGBTsのこと』レビュー LGBTを知ると世の中が変わって見える!? 今さら聞けない性的マイノリティへの疑問 2016/11/25 20:00 ブックレビューLGBT 『ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか? 聞きたい!けど聞けない!LGBTsのこと』(イースト・プレス) 最近、「LGBT」という言葉をあちこちで耳にする。あらためて説明すると、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略で、性的マイノリティの人たちのことを指す、いわば、彼らにとってのチーム名のようなもの。 『ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか? 聞きたい!けど聞けない!LGBTsのこと』(イースト・プレス)は、そんなチーム「LGBT」とのお付き合いを考える本として、先日発売された。 ちなみに、タイトルにある「LGBTs」に小さな「s」がついているのは、LGBTにも収まらない人たちがまだまだいて、そういう人たちを含めると、「LGBTTIQQ2SA」まで続くからとのこと(!)で、みんなをひっくるめる意味があるそう。 著者は、タレントであり、文筆家の牧村朝子(通称・まきむぅ)さん。2013年にフランス人女性のモリガさんと、フランスでの同性婚法制化を機に結婚し、本書の中では、モリガさんも一緒にLGBTsにまつわる疑問について、ざっくばらんに答えている。 例えば、「仲の良い女友達から、レズビアンなのと告白された。どう接すればいいのでしょうか?」という質問では、 まきむぅ:お友達が何を求めてそう言ったのかわからないわね。モリガは友達にカミングアウトしたことってある? モリガ:うーん。会話の流れで好きな異性のタイプ? 特にないな~、私は女が好きだから、とかなら言ったことはあるよ。でも、特に私はレズビアンっていう意識はないなぁ。 まきむぅ:そうねー。女が好きな女だからといって、私はレズビアンって思っているとは限らないのよね。(中略)“レズビアン”って言葉は、そう名乗らなければ勝手に異性愛者だということにされてしまう社会で、いないことにされないために名乗る言葉なわけ。 という何気ない会話に、ハッとさせられる。また、「ゲイの友達がほしい!どうすれば女と友達になってくれるの?」という質問に対しては、 まきむぅ:ゲイと友達になりたいんです!! って言わないことが必要なんじゃないかなぁ。 モリガ:どういう意味? まきむぅ:そんなふうに言われた人は、「ゲイであれば自分じゃなくてもいいんだ」って思うじゃない。 よく考えればそりゃそうなのだが、ゲイの人たちがみんな、ファッションセンスが良くて、オネエ言葉で話して、毒舌でビシバシ言ってくれる、というような人ばかりであるわけがない。なお、まきむぅさんによれば、“ゲイ友”を求めてゲイにつきまとう女は、オカマ(お釜)にくっつく余計な何かという意味で、“おこげ”と呼ばれるそうで、日本語のおもしろさにも感心させられる。 ほかにも「好きになった職場の上司に、ゲイだという噂が……ゲイかどうか確かめる方法はありませんか?」「LGBTの人たちと接する時、注意すべきことは?」「彼氏が私に隠れて女装。どうすれば?」などなど、興味深い質問のオンパレード。 おふたりの返答は、いつもカラッとしているので、すいすい読める。そして、どの答えにも、「男とか女と区別するのではなく人間として尊重する」「LGBTsが特別なのではなく、いろんな人がいて当たり前」ということを大前提としていることがひしひしと伝わってくる。 第2章や第3章では、詳しい用語の説明や歴史背景なども、かなり詳しく紹介され、第4章では、まきむぅさんが22歳になるまで、自分を異性愛者だと思って生きてきて、男性とお付き合いをする「努力」を重ねてきたことなどについても語られている。 この本は、LGBTsとの付き合い方を考えるきっかけになるのはもちろん、女だったらこう、男だからこう、という男女の決めつけを改めて見直すことにもつながる1冊。一方的な決めつけから解放された時、世の中は、がらりと変わって見えるのかもしれない。 (上浦未来) 最終更新:2016/11/25 20:00 Amazon ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか? ——聞きたい! けど聞けない! LGBTsのこと—— (イースト新書Q) 決めつけはよくない 関連記事 教科書にLGBTが必要な理由 多様な性の理解における学校教育の重要性地方はセクシュアル・マイノリティへの偏見が強い 名古屋のLGBT成人式に苦情電話も自分の中の差別意識を見つめ直すために ゲイアートの巨匠が問いかける、LGBTを取り巻く社会 レズビアン風俗に行ったのは母から自立するため 人間関係に悩んだ漫画家の生きづらさの乗り越え方“女の子大好き”な女装男子から見えてきた、男女のコミュニケーションツールとしての「メイク」 次の記事 豊洲タワマン住人の意識とは >