カルチャー
インタビュー【前編】

ディズニーランドで働く人の“ブラック”な実情――「パワハラ」「雇い止め」悪しき問題の数々

2018/08/30 19:00

――ほかにはどのような問題がありましたか?

 雇用契約の更新をしない、いわゆる雇い止めです。しかも、その理由が、雇い止めには値しないような内容です。例えば、非正規雇用従業員のAさんは、直属の上司であるスーパーバイザーに、「Bさんが『Aさんに睨まれた。顔が怖い』と言っている」と、注意を受けたそうです。Aさんとしては、Bさんがその日、急遽「仮のパートリーダー」に任命されたので、「大丈夫かな?」と様子を見ていただけだったと。Aさんは、「睨んだつもりはなかったが、怖がらせたのならごめんなさい」と、スーパーバイザーに素直に謝り、翌日Bさんにも直接謝罪をしたのですが、その日の昼に再びスーパーバイザーに呼ばれて、「なぜ直接Bさんに謝ったんだ。本人が怖がっているじゃないか。謝りたいなら僕を通せ」と言われ、事実確認書まで書かされました。

 そういうことが積み重なってAさんは、「業務指示に対し、横柄な態度を取っている」として、次の更新はできないと言われてしまったのです。Aさんが契約終了の確認書への署名を拒否したところ、小部屋でスーパーバイザー2人とAさんが働く店の店長という3対1の状態で、4時間にわたって詰められ、「書いても書かなくても契約終了は決まっている」と言われて、署名してしまったものの、やはり納得がいかないと、なのはなユニオンへ相談がありました。団体交渉を申し入れ、会社が調査した結果、「事実確認書は始末書ではない。更新しない理由にはならない」として、すぐに復帰できたんです。

――にわかには信じられない雇い止め理由ですね……。

 ほかにも、パワハラが原因で心の病気になり、1カ月以上休んだところ、「就業規則に反する」として雇い止めをされたという方もいました。そもそもの原因はパワハラなので、雇い止めはおかしいと訴えたところ、会社がパワハラを含めて調査を行い、その事実を認め、リハビリ復帰かつ部署も変更になり、無事、復職することができました。ほかにもいろいろな理由による雇い止めがありましたが、ほとんどが交渉で復帰できています。逆にいうと、その程度の理由で雇い止めをしているということなんです。

――7月に、パワハラで訴えを起こした女性のニュースが話題になりました。上司から「病気なのか。それなら死んじまえ」「俺の前に汚ねえ面見せるな」、先輩から「お前みたいにやる気のない奴は、全力で潰すから」など、従業員12名に暴言を吐かれた……という。あの夢の国で、そんなパワハラが行われていたとは、と戦慄しました。

 パワハラの相談は結構あります。多くは暴言ですが、「無視」や「排除」など、カタチとして見えづらく、交渉するにも立証しづらいケースも多いですね。スーパーバイザーや店長といった上司からだけでなく、同僚間でもあるようです。ただ、セクハラそのものでの相談は、今のところ一度もありません。

 なお、全てのスーパーバイザーが問題だということではありません。相談に来た方から「あのスーパーバイザーはすごくいい人だ」といった話も聞くので、どの上司の下に就くかで、環境が違ってくるということはあるようです。とはいえ、賃金や労働条件など、根本的に改善すべき問題があるのは間違いありません。1日も早く改善されて、働く人にとっても“夢の国”であってほしいと願います。

(後編につづく)

最終更新:2020/05/06 19:55
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