インタビュー【前編】

ディズニーランドで働く人の“ブラック”な実情――「パワハラ」「雇い止め」悪しき問題の数々

2018/08/30 19:00

「シフトを減らされる」オリエンタルランドのブラックな実情

――なのはなユニオンが、オリエンタルランドの労働問題に取り組み始めたきっかけを教えてください。

 オリエンタルランド側から「ショーがなくなったので」と解雇されてしまった非正規雇用従業員のパフォーマーたちから相談を受けたのがきっかけです。非正規雇用とひとくくりに言われますが、オリエンタルランドとの直接雇用と、請負業者を間に挟む間接雇用があり、彼らはまさにその間接雇用でした。その場合、本来は請負業者がパフォーマーへの業務指示や労働時間の管理などをしなければならないものの、実質は、衣装の貸出や業務指導、遅刻の際の反省文提出など、オリエンタルランドのスーパーバイザーやステージマネージャーが行っていたため、「これは偽装請負にあたる」として、解雇を撤回し直接雇用してほしいと、オリエンタルランドに交渉申し入れしました。しかし、直接雇用ではないことを理由に交渉を拒否されてしまい、1年間近く舞浜駅周辺で宣伝行動を続け、その様子を見聞きしたほかの非正規雇用従業員が、相談に来るようになったんです。

――これまで寄せられた相談には、どのようなものがありましたか?

 多いのは「契約上の収入額が保証されない」という相談です。天候が悪くなって来場者数が減るとシフト途中でも帰宅を命ぜられたり、そもそも悪天候が予想される日の前日に「明日は来なくていい」と言われたり、あとは、閑散期にシフトを減らされるなどしたそうです。ある男性は、時給200円アップの早朝の時間帯を含む労働時間で契約したのに、いざ働き始めると、早朝勤務にほとんどいれてもらえず、合計の勤務時間も事前に言われたものより短く、手取りが11万くらいで生活できないと言っていました。

 結婚して家庭を持っている生計維持者や、単身で自活している人などは、シフトをやたら削られると、たちまち生活が立ち行かなくなってしまいます。そのため、オリエンタルランドに対して、「月最低120時間」の労働時間の保障を交渉で求めました。それでも、平均時給1,000円だと、月12万円にしかなりません。そこから保険や税金などが引かれるので、十分な額とは言えないんです。交渉を重ね、現在は月114時間まで保障されるようになりましたが、いまだ120時間には達していません。


――時給1,000円が平均的なのですね。ディズニーランドの盛況ぶりを見ると、オリエンタルランドはかなり儲かっている印象なので、意外に低いと思いました。

 そうですよね。オリエンタルランド側が値上げを実施したのは、16年春の「普通に働けば10円、頑張って働けば20円アップ」と、昨年春の「組合費分アップ」で、それらを除けばもう何年も上がっていませんね。我々も毎年春先に賃金アップの交渉をしているのですが……。ディズニーランド周辺地域の時給平均は上がっていっているので、実際のところ、ほかで働いた方が生活は安定するのでは。でも、ディズニーランドが大好きで、「ここで働きたい!」という強い熱意を持って働いている人が多いため、正規雇用でなくても、時給が低くても、これでよいと思っているというのが現状だと感じます。

東京ディズニーランドベストガイド 2018-2019 (Disney in Pocket)