『dele(ディーリー)』、“怪物化”する山田孝之を受容する菅田将暉の反射神経
まれに演技の面白さだけで成立してしまうドラマがあり、現在テレビ朝日系で金曜夜11時15分から放送されている『dele(ディーリー)』がまさにそういう作品だ。
主演を務めるのは菅田将暉と山田孝之。
物語の舞台は、デジタル遺品(スマートフォンやパソコンに残ったデータ)を消去する業務を請け負う会社「dele.LIFE」。25歳のなんでも屋・真柴祐太郎(菅田将暉)が、車椅子のプログラマー・坂上圭司(山田孝之)の元で、死んだ依頼人のことを調べるうちに、意外な事実が明らかになっていくという、現代的な探偵ドラマである。原案・パイロット版の脚本は小説家の本多孝好が担当していて、すでに小説版も刊行されている。
この作品を見ていて思い出すのは、70年代に放送されたテレビドラマ『傷だらけの天使』(日本テレビ系)だ。探偵会社の末端調査員として仕事をする小暮修(萩原健一)と弟分の乾亨(水谷豊)が主人公の本作は、深作欣二や神代辰巳といった名監督の参加する作品だったが、何より萩原を筆頭とする俳優陣の掛け合いが面白いドラマだった。
本作もストーリー以上に、菅田と山田の軽妙なやりとりに引き込まれる。最初に印象に残るのは、山田演じる坂上のしゃべり方だ。坂上は、相手とコミュニケーションを取る気がまったくなく、目の前にいる真柴のことを意に介さずに早口でしゃべる。キャッチボールで言えば、受け取った球を間髪入れずに豪速球で返し、しかもストライクゾーンから離れた大暴投なのだが、そんな暴投をしっかりと受け止めて、キャッチボールを成立させてしまう真柴の反射神経がすごい。
今作の菅田は、2000年代初頭に窪塚洋介が連続ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)や映画『GO』で見せたような、身体性を感じさせる軽妙な演技を見せている。
第1話冒頭、駅のホームで真柴は警察に取り押さえられ、そのまま裁判のシーンに入る。ここでの真柴は、しゃべりは淡々としているのに、佇まいは飄々と、常に体のどこかが動いているので見入ってしまう。体全体が、いつもふわふわしていて自由に見えるのだ。荒々しいアクションシーンから始まるため、動物的な印象を受けるが、裁判官の質問に対して早口で論理的に話すことから、頭の回転は早いのがすぐにわかる。