King&Prince・平野紫耀と『花のち晴れ』神楽木晴、2人の姿が重なって見えたワケ
平野は現在21歳のジャニーズ事務所に所属するアイドルだ。15年に結成されたグループMr.King vs Mr.Princeに所属し、今年King&Princeとして『花のち晴れ』の主題歌「シンデレラガール」でCDデビューした。
14年の『SHARK』(日本テレビ系)でドラマ初主演を果たしているが、演技経験は浅く、主人公の音を演じた杉咲花はもちろんのこと、中川大志、飯豊まりえと、今の若手の中ではダントツに演技力のあるメンバーに囲まれていたため、芝居のぎこちなさが目立つ形となった。しかしそこがかえって、いつも行動が空回りしてジタバタしている神楽木の青臭さを引き立たせることとなり、その初々しさに好印象を持った。
一方、松本潤が道明寺を演じた頃は華やかな英徳学園だったが、それから時がたち、寂れつつある学園の姿は、そのまま今のジャニーズ事務所を反映しているように見えてしまう。
2年前のSMAP解散以降、TOKIO・山口達也の未成年暴行未遂、NEWSメンバー(加藤シゲアキ、小山慶一郎)の未成年との飲酒騒動など、次から次へとジャニーズ事務所所属のタレントに問題が起こっている。圧倒的優位を誇っていた男性アイドル市場の立ち位置も、新興勢力としてのEXILEグループや特撮ヒーローもの出身の2.5次元の舞台から出てきたイケメン俳優がテレビドラマに出演するようになってきている。すぐに転落することはないだろうが、現在の10~20代のジャニーズアイドルに関していうと、ファンコミュニティの間では知られていても、その外側には存在が届いておらず、上の世代に比べると小粒で力不足に見えてしまう。
そんな逆風の中で満を持してCDデビューしたKing&Princeに対する、ジャニーズ事務所の期待は相当なものだろう。平野が『花のち晴れ』で主演を務めたのは、「これからのジャニーズは彼で行きます」という宣言みたいなものだったのかもしれない。デビュー曲「シンデレラガール」は大ヒット(上半期シングルランキングでは62.6万枚を売り上げて5位にランクイン)して、順風満帆のスタートだったと言えるが、しかしドラマが成功だったかというと、最後まで中途半端だったように思う。
それこそ、歌番組でキンプリが見せる華やかな王子様像を反映したイケメンドラマとして、もっと突き抜けてもよかったが、寂れつつある学園を守ろうとする神楽木の姿を描くことで、妙に生々しいドラマとなった。ジェームス・ディーン的な苦悩する青年像は平野にハマっていただけに、本作のようなイケメンドラマではなく、もっと暗い青春ドラマの方が良かったようにも思う。
ステージでは華やかな王子様キャラが眩しい平野も、悩める青年像を演じられることが本作で証明された。3月に公開された映画『honey』で主演を務め、こちらも神楽木のような不良だが可愛げのある男の子の役だった。ヘタにコメディに寄せずに、影のある青年をシリアスに演じた方が、本人の魅力が際立つのではないかと思う。
(成馬零一)