中学受験で難関私立合格、しかし不登校に――「息子を医者に」と願った“完璧主義ママ”の罪
しかし、それで“めでたしめでたし”とはいかなかった。中学入学後、新入生にとって初めての中間試験が行われたのだが、祐樹君の結果は220人中の203位。到底、亜由美さんは納得できない。それから、祐樹君に家庭教師を付けて、懸命に頑張らせたものの、期末試験の結果は220人中198位。「頑張っても、頑張っても、成績は上がらない→やる気もなくなる→休みがちになる→ますます授業が解らなくなる→朝、起きられなくなる→指摘すると暴れ出す」という毎日が続き、ついに祐樹君は完全不登校に陥った。
「行かないのであれば、学費がもったいないから公立に転校しろ!」とだけ言った父親への反発なのか、祐樹君は「入学した学校は辞めない、しかし行く気もない。公立中へは絶対に行かない」という主張を曲げないのだそうだ。
祐樹君は今現在、中学3年生。その中学に籍はあるが、ほとんど学校には行っていない。いわゆる“引きこもり状態”にある。学校からはやんわりと「高校は別の学校に行ってはどうか?」と言われているらしい。
この時点で亜由美さんは筆者に「医学部のある通信制の大学付属高校に行かせようと思うのですが、どうでしょうか?」と相談してきた。「それは祐樹君の希望なのか?」と尋ねたところ、亜由美さんはこう答えた。
「いいえ、祐樹は何もしたくないと言っています。将来のことが考えられないんですよね。だから、私が道筋を立ててあげないと!」
「木を見て森を見ず」(物事の一部分や細部に気を取られて、全体を見失うこと)という諺があるが、亜由美さんが作ろうとしている道の先は、果たして森につながっているのだろうか。“中学受験”は親が上手に誘導できると“我が子の人生への大いなるギフト”になるが、そうでなかった場合のダメージは計り知れないほど大きくなるので、注意が必要だ。
完璧主義の親は時に過干渉になり、子どもをコントロールしようと躍起になる。今、中学受験生を抱えている保護者は、自分が親のエゴで我が子を追い込んでいないかということを自問自答してみてほしいと、筆者は強く願っている。
(鳥居りんこ)