「障害者について知らないからこそ、怖いと思っていた」社会が変わるために必要なこととは?
2018年4月、障害者雇用促進法が改正されたことによって、企業の法定雇用率(常用雇用者数に対する障害者の割合)が引き上げられた。光枝さんはこれを、追い風と見ている。
光枝 障害者の雇用に積極的な企業は増えていますし、特に精神障害の方の採用は、これから増加するでしょう。精神障害をお持ちの方の中には、かつて就労経験があって、そのときにスキルを身につけられているケースも多々あります。そうした人たちが職場で困るのは、能力に関することではなく、多くが対人関係やコミュニケーションスキルの問題です。だから、企業側に障害者への理解を浸透させる役割の方が1人でもいて、彼らの日々の不満や不安に耳を傾けてもらえたら、安定して働ける方は多いと思います。なかには、視覚からの情報がインプットされにくい方もいるので、そういう場合は口頭で順を追って説明してあげるとか。一人ひとりの特性を見極めてフォローしてくれる人が企業側には必要です。
障害者の就労は、障害者の努力のみによってなされるものではない。企業が受け入れ体制を整え、社会全体も変化していくことが必要なのだと、上田さんと光枝さんは語る。障害者は社会の一員なのに社会とつながりにくい、そんな状況を現在進行形で変えている両氏だが、冒頭で紹介した通り、そもそもは障害者について特に考えることなくこれまでの人生の大半を生きてきた。そのお2人の意識の変化は劇的なものではなく、ちょっとした気づきの積み重ねによってもたらされたもののように見える。最後に、社会が、そして個人が変わるためのヒントとなる、上田さんの言葉を紹介しよう。
上田 僕自身、放課後デイサービスをやっているうちに、ずいぶん変わったと思います。以前は、障害者について何も知らなくて、知らないからこそ、怖いと思っていたところもあった。でも、いまはウチに通ってくれている子みんなが、かわいいと思います。彼らの現在についても将来についても、ずっと考えていきたい。放課後デイサービスや就労支援を通して、障害者がどんどん社会とつながっていって、健常者と触れ合う機会が増えれば相互理解が進むだろうし、そこからさらに好循環が生まれるのではないでしょうか。僕らが放課後デイサービスを始めて6年、社会は少なからず変化したと感じています。これから先は、さらに加速度的に変わっていくといいですよね。
(三浦ゆえ)