中学受験に「父親」は必要ない? 試験本番、夫に「綺麗ごと言わないで!」と激怒した妻の告白
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
前回のコラムでは、中学受験が夫婦のすれ違いを生み、“離婚”にまで発展したケースをご紹介した。我が子のために良かれと思った中学受験が、まさかの“家族崩壊”を引き起こすという事実。読者の中には「中学受験=怖い」という感想を持った方もおられたかもしれない。
しかし、物事は常に表裏一体。同じことを経験しても、人によっては真逆の展開が待っていることもある。今回は反対に中学受験をしたことにより、夫婦の絆が強まった由佳さん(47歳)のケースを紹介したいと思う。
夫は「何もしないくせに、いいとこ取り」
由佳さんにはひとり娘がいるのだが、その懐妊までの日々は決して平穏なものではなく、長い間、不妊治療をしていたという。夫婦の総意で「子どもを持ちたい」という選択をしたはずなのに、気が付けば由佳さんの方に治療の負荷がかかっており、毎月の医者が決めた“家族計画実行日”は、夫婦共々、気が重い作業になり果てていたそうだ。
そして7年の歳月がたち、人工授精が成功し、めでたく春香ちゃんが誕生する。由佳さんは春香ちゃんの子育てについてこう語ってくれた。
「春香は切迫流産、切迫早産、未熟児という形での出産になったため、私は普通の母親以上に子育てにはナーバスだったかもしれません。とにかく、『この命を失わないようにしなければ!』と必死だったのです。正直、主人のことは二の次、三の次くらいの位置づけでした。主人はそのことに対して、特段、文句を言ったことはありませんが、やはり心の中では不満もあったことと思います」
家庭内は、完全に由佳さん・春香ちゃんの“女性軍”と夫に分かれ、特に子育てに関しては、春香ちゃんの習い事ひとつとっても、由佳さんの独断で決められていたそうだ。