サイゾーウーマンカルチャー大人のぺいじ官能小説レビュー人に化ける猫がお爺さんに恋心を抱く『三姉妹』――「新感覚官能」のユニークな世界 カルチャー [官能小説レビュー] 人に化ける猫がお爺さんに恋心を抱く『三姉妹』――「新感覚官能」のユニークな世界 2018/06/05 22:00 官能小説レビュー 『三姉妹』(宝島社) 官能小説の代表的なカテゴリーといえば「SM」や「人妻」モノである。これらの二大シチュエーションは固定ファンも多く、昔から広く愛されている。特に、SM作家として永遠に語り注がれる団鬼六の作品は、1人の女性が陵辱される様子を緻密に描写し、最初は苦痛しかなかった行為に対して、少しずつ性の悦びを開花してゆく女性の強さや美しさ、艶かしさを瑞々しく表現し続けた。 そんな中、最近少しずつ見られるのが「新感覚官能」である。不慮の事故により亡くなった女性が、秘めた思いを昇華させるために、見ず知らずの女性に憑依し、片思いの男性に抱かれる……など、摩訶不思議なシチュエーションに官能を乗せた物語も多く刊行されている。 もちろん官能小説としても楽しめ、またストーリーもポップに描かれているので、女性も手に取りやすい作品が多いことが特徴だ。 中でも面白かったのが柚木郁人の『三姉妹』(宝島社)。柚木は官能小説ファンを唸らせるようなダークで濃厚なセックスシーンを書く小説家だが、本作はとてもかわいらしいシチュエーションとキャラクターが描かれていて、女性にもおすすめの1冊である。 本作の主人公は「猫」。主人公のアイは三毛猫三姉妹の末っ子。彼女が住むのどかな港町・桜絹市の三毛猫は、先祖代々、人間に恋をすると神様から「人」の姿を授かることができるのだ。 アイは、猫の姿の時に迷子になり、助けてもらった老夫婦のお爺さんに恋心を抱き、人の姿に化ける。愛するお爺さんとの生活を守ろうとするアイだが、大切な妹を守るために狐に立ち向かう姉たちは、人として遊郭に沈められることとなってしまうのだ――。 柚木氏ならではのしっとりとした官能シーンは健在ながらも、末っ子気質の愛らしいアイのキャラクターや、お爺さんとの微笑ましいやりとり、姉と狐との戦いなど、魅力的な登場人物が繰り広げる展開も素晴らしい。 官能小説というと、湿度の高いダークなものを想像してしまうかもしれないが、こうした明るく和やかな作品も多く存在する。本作は、官能小説の可能性を強く感じさせる1冊である。 (いしいのりえ) 最終更新:2018/06/05 22:00 Amazon 三姉妹 (宝島社文庫) 文字通り摩訶不思議な世界 関連記事 食事からセックスの相性や2人の親密さを想像させる『裸飯 エッチの後なに食べる?』SM、巨乳、ミステリー……官能小説の“いいとこ取り”を堪能するアンソロジー本『翳り』「エロを笑う」日本特有の感覚で官能小説の楽しさを味わえる『淫謀』恋愛小説が描くセックスの醍醐味――ベッドシーンが作品の全てを物語る『ナラタージュ』セックスを仕事にする女が「かわいそうな女」とは限らない――風俗嬢と教師の価値観のズレ 次の記事 NEWS・加藤、ギャンブル通い? >