“妊娠順番制”は仕方ないのか? 保護者と保育士双方が語る、「人員不足」による保育園崩壊
一方で保育士にとっても、人員不足は大きな悩みのタネになっているようだ。今年4月から認証保育園で保育士として働くようになったばかりの香織さん(仮名)は、早くも転職を考えているという。
「専門学校に在学中に、小規模保育園に2週間ほど研修で働きました。その時は、周りの先生たちも優しく、子どももおとなしい子ばかりで、『これなら大丈夫そう』と感じたんです。実際に就職すると、保育士の数が足りておらず、1年目から副担任という役割を与えられて、残業しないと終わらないほどの業務量。上の先生から頼まれると断れなくて、土日は園の壁面飾りを持ち帰りで作ったり、生徒20人分の創作グッズを準備したり。とてもこの給与ではやっていられないって感じています」
保育園には、保護者会や個人面談など、親と関わらなければならない行事や、運動会、クリスマス会というような年1回の大型イベントがあるので、通常業務以外の業務も多い。保育士の思わぬ退職があると、その分を残りの保育士たちでカバーしなければならない。
「途中で、担任するクラスが変わることもあります。その際に困るのが、園児たちの名前なんです。持ち上がりなら新たに覚えなくてもよいのですが、年度の途中でクラスが変わってしまうと、新しいクラスの園児たちの名前を10人以上覚えなければならなくてとても大変。今は、個人情報保護法がうるさく、うちの園では名札が禁止で、まだきちんと言葉を話せない乳児だと、誰が誰なのかわからなくなることも。それから、園児ごとに、お昼寝に使うタオルケット、下着など持ち物の特徴を把握するのも大変なので、入れ間違いや紛失が発生して、親からクレームが入ることもあります」
保護者側からすると、相手が新人なのかベテランなのかは関係なく、“保育士は全ての園児を把握している”という態度で、園側にクレームを入れてくる傾向があるそう。迎えの時に、保育士から、子ども同士のトラブルやちょっとしたケガなどを報告されると、「もっと詳しく」「相手はどの子ですか」などと食い下がる保護者は少なくないというが、「それも、保育士が全てを把握してると思っているからでしょう。でも、新人が副担を任せられるような人員不足の状況下では、なぜ子ども同士が喧嘩したのか、どういったタイミングでのケガだったのかなど、その詳細を全て把握しきれません」。
トラブルの現場を見ていなかった新人が、保護者からの質問に対し、うっかり「わからないです」と答え、園長にまでクレームが入ったこともあるという。保育士の人員確保は、子どもや保護者だけでなく、園側にとっても重要なことなのだ。