元極妻が語る、神戸山口組「山健組」の代替わりと20年間「刑事被告人」だった親分の死
もうひとつ、山口組をめぐって気になるニュースがありました。
5月9日に、山口組で若頭補佐や顧問を歴任した芳菱会(現・國領屋一家)の元総長・瀧澤孝氏(80歳)が亡くなられました。瀧澤氏は、2009年に引退されていますが、01年に「ボディガード役の子分さんに拳銃を持たせていた」という銃刀法違反で起訴されて以来、亡くなるまでの約20年を「刑事被告人」として過ごされたことで、ヤクザやメディア関係者の間では有名な方です。
1997年に山口組五代目の若頭だった宅見勝氏が射殺されてから、「親分衆はボディガードに銃を持たせている」という警察の見込み捜査が続いていたのですが、瀧澤氏は「銃の所持は指示していない」と最初から否認していました。
結果は、一審も二審も無罪。ざっくりいうと、「拳銃を持つように命令したかどうか証拠がない」すなわち「ヤクザだからって、指示したかどうかわからないなら、無罪でいいじゃん」的な判断だったのです。今では考えられませんけどね。でも、最高裁は「明確な指示? そんなこと知るか。暴力団組長に無罪判決なんか出せねえ」と思ったらしく、地裁に差し戻しました。それで、地裁がまた無罪判決を出し、次は高裁が再び差し戻し……という異例の無限ループ裁判となったのです。
瀧澤氏が亡くなられた日は、大阪高裁でナント8度目(!)の審理となる「第二次差し戻し控訴審」の判決が言い渡される予定でした。氏は以前から体調を崩されていて、この日も弁護団が健康上の理由で公判手続き停止を求めていたと報道にありました。被告人である瀧澤氏が亡くなられたことで公訴棄却となりましたが、ご存命であれば、まだまだ続いていたのでしょう。すごいお話ですね。
弁護士さんは儲かったかもしれませんが、基本、裁判が開かれるために使われるお金は全部税金です。なんでこんなムダが堂々と行われているのでしょうか? 誰か止める人はいなかったんですかね。
ちなみに、瀧澤氏の起訴とほぼ同時期に、現在の山口組六代目である司忍氏、三代目山健組の桑田兼吉氏(07年死去)も同様の案件で起訴されています。司氏は一審では無罪だったものの、05年に有罪が確定、桑田氏は一審から有罪で03年に確定して、それぞれ収監されています。そういえば司氏は10億円、瀧澤氏は12億円という破格の保釈金も当時は話題でした。
今なら間違いなく一審から有罪でしょうが、ズルズルと結論を先延ばしにされるのも、気持ちのいいものではないですね。それにしても、晩年をずっと刑事被告人として過ごされるのって、どうなんでしょうか? 「病状の悪化は、裁判のストレスが原因」とおっしゃる関係者もいらっしゃいます。迅速な裁判を受ける権利は、憲法で保障されているのに、ヤクザにはそれすら認められません。まさにヤクザであることが罪だという「ヤクザ罪」です。
「それがイヤならヤクザをやめろ」と思われるでしょうね。でも、やめても生活できる方は限られていますし、瀧澤氏クラスになれば、たくさんの若い衆を養わなくてはならないので、簡単にはやめられないでしょう。元当事者として、いろいろ考えさせられるニュースでした。