カルチャー
『ウチにはクズがちょうどいい ADHD女子の恋愛変歴』著者・ざくざくろさんインタビュー

初体験はインド人、親に内緒で中国人と入籍……刺激を求める「ADHD女子」の恋愛遍歴とは?

2018/05/19 19:00

 漫画に描かれているのは、彼女が最も苦悩した時代のエピソードの数々。そう聞くと少し身構えてしまうが、ざくろさんの漫画はユーモアを交えて恋愛経験をつづっているのが特徴だ。たとえば、初体験の相手・インド人のアンスール氏とのファーストキスでは、吸引力が強すぎる彼のキスを「何コレ金角銀角のあのひょうたん!? ウチ今日死ぬんや」と死を覚悟したり、元夫・メガネのアソコを「万里の長城」にたとえたりと、独特な表現をしていることも人気の理由だ。

「多くの人に読んでもらうには、ギャグやユーモアを織り交ぜなければ興味を持ってもらえないと思ったので、漫画を描くときには暗い内容もなるべくポップにすることを意識しました。下ネタもたくさん載っていますが、それらは発達障害と関係ない人にも興味を持ってもらえるように描いただけなので、本当に読んでほしいのはそこではないんですよ」

 発達障害をどう伝えるか、どうすれば興味を持ってもらえるか。それを心がけながら漫画の構成を考えているという。そんな彼女が漫画をアップするブログやインスタグラムには、さまざまな感想が寄せられる。

「発達障害の人から『心のモヤモヤを言語化してもらえた!』と言われたり、発達障害ではない人からは『職場のADHDっぽい人、こんなこと考えてたのか!』という感想をいただいています。そんなコメントを見るのが生きがいになってきたので、今後も“わかりやすさ”を重視して、漫画を描いていきたいです」

■「心が病んでいるときこそ、創作のチャンス」

 「漫画を通して発達障害の人たちと健常者をつなぐ通訳者になりたい」と話すざくろさんだが、なぜ自身の恋愛経験を漫画化したのだろうか?

「今の夫はまるで仏のように優しくしてくれるので、再婚してからは平和な日々が続いていたんです。にもかかわらず、私は時々ものすごい虚無感に陥ったと思ったら、反対に『何か刺激のあることをしたい』という感覚に襲われる。エネルギーを持て余していて、夜中に自転車で爆走することもありましたが、満たされはしませんでした」

 自分自身でもコントロールできない怒りや悲しみが込み上げ、場所を問わず暴れてしまうこともあったという。

「ああ、もうこれは酒とドラッグに溺れるしかないなって思ったんですけど、酒もドラッグも別に興味なかったわ、と気がつきまして。それからいろいろ考えて、心が病んでいるときは創作のチャンスだな、と思ってセルフカウンセリングを兼ねて漫画を描き始めました」

 最近は「薬と老化のおかげで極端なことはしなくなりました」と、ざくろさん。彼女のインスタグラムのフォロワーは6万人を超え、多数寄せられるメッセージに救われていると語る。何より「強く優しい夫のおかげで、自分大好き人間になれた」という。

「夫が私の光の部分と影の部分も認めて愛してくれたから、というのは大いにあります。あとは、いろいろと調べた結果、自己肯定感の低さがすべての元凶だということがわかったので、自分で自分を褒めたり、自愛の本を読みまくったり、自己分析をしたりと、いろいろなことを試しました。自分で自分を愛さないと、他人も愛せないし、他人からの愛も受け取れないですからね。夫の存在と、自分を見直すこと、この両方がいい方向に作用して、自分大好き人間が完成しました」

 自分を愛するのはとてもつらく、長い時間を要する作業だったという。それでも、旦那さんと一生一緒にいたいという一心で努力を重ね、現在は、ほぼ暴れることはなくなった。

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